約 84,464 件
https://w.atwiki.jp/konatsuka/pages/83.html
明日は七夕、私とつかさの誕生日。 子供の頃から、いつも二人で一緒に祝ってきた誕生日。 ここ数年は、日付が変わるまでどちらかの部屋に一緒にいて、零時になると一番にお互いを祝っていた誕生日。 でも今年は、今年からは…… 「おねえちゃん、ごめんなさい」 「何言っているのよ、愛しい人とすごさなくてどうするのよ」 いつもの困ったような瞳がつくる頼りなげなつかさの表情に、姉としての自分が言葉を発する。 「じゃあ、行ってくるね」 「うん、でも、明日帰ってきた時にそんな顔していたら、部屋に入れてやらないからね」 「えっ、おねえちゃん…」 「冗談よ、まあ、これから作るあんたと私のバースデー・ケーキが失敗作でも食べてもらうくらいの罰にしておくわ」 「うん、でも大丈夫だと思うよ、じゃあ」 ちらっと携帯の時計を見て急ぎ足で駅に向かうつかさの背中を見送りながら、大丈夫なのはケーキのほう?それとも… 相変わらず、肝心な時にちょっとアウト・フォーカスな返事に苦笑しながら未だに姉として心配している自分に呆れた。 もう私の前でも『妹のつかさ』ではなく『こなたの恋人のつかさ』としての行動の方が多くなって姉離れを宣言されつつあるのにね。 姉離れをさせることを心配していた私が逆に妹離れしなけりゃと思うことになるなんて、はぁああ… 何かを決意したように私と過ごしてきた姉妹の誕生日に区切りを付けて、愛しい人に年齢が追いつくこの日にこなたの許へ出かけていった『つかさ』。 きっともっと多くの二人の秘密や悩みを共有して明日はどんな顔になって帰ってくるんだろう。 そんなことを思いながら、未練がましく『妹のつかさ』と『私』のバースデー・ケーキを作る私。 誕生日おめでとうつかさ… え、まだ明日じゃないかって?いいのよだってこなたより先に言わなきゃ悔しいじゃない、うふふ。 ※つかさとこなたの交際のきっかけについては、柊家の掟 をご覧下さい ■『柊家の掟』シリーズは1-724氏作者ページから時系列順にアクセスできます ■作者別保管庫(3スレ目)に戻る コメントフォーム 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3404.html
「……よし、俺のコレクションは全部無事だな。古泉、そっちはどうだ?」 ブツブツ…… 「こっちも問題ありません」 我々は敵の虚を突き、見事目標の奪還に成功しました。 「そうか。キョンそっちは……」 ブツブツ…… 新川さんに谷口君を連れてきてくれるよう頼んでおいたのが、こんな形で役に立つとは思いませんでしたが。 ブツブツ…… 人生、何が功を奏するか分かりませんね。 「キョン……いい加減に切り替えろよ?」 ……しかし、奪還の代償は少々大きかったようです。 ブツブツ…… 先程、例のグラビア本の残骸を手にした途端、彼の精神は……。 「ポニーテールってのはロングヘアの女性らしさと、ショートヘアのうなじの露出を併せ持つ最高のヘアースタイルなんだ。ウェーブのかかった髪のポニーテールも悪くないけど、個人的にはやはり黒髪のストレートヘアだな。髪を留める装飾品はゴムやリボンなどがあるが、つけ外しのやり安さで俺はバレッタを推す。何故かって?もちろんポニーテールが最強なんだが、想像してみてくれ。ポニーテールを解いた瞬間に、ざぁ……っと流れる綺麗な黒髪を。……な?ぐっとくるだろ?……こない?……残念ながらお前とは友達になれないらしいな、お帰りはあちらだ」 「はぁ……」 ……こんな感じで、さっきからポニーテールの魅力を一人で語っています。 ……これはかなりシュールな光景ですよ。 「しっかりしろ!キョン!」 谷口君が肩を揺すっても、頬を叩いても彼は上の空です。 ……困りましたね。彼は今回の騒動を沈静化出来る、唯一の鍵だというのに。 「……駄目だ。不抜けてやがる」 ドス、と大きな音を立て苛立たしげに谷口君が座席に腰掛ける。すると、今まで事態を静観していた人物が口を挟んできた。 「情けないですな……たかがグラビアの一つや二つ、なんだと言うのです」 「新川のとっつぁん……」 「あ、新川さん?」 いきなり何を言い出すんですしょうか?傷心中の彼にそんなキツイ言い方は……。 「……新川さん、いくら普段世話になってるあなたでも、言っていいことと、悪いことがある。あのグラビアは俺の魂の一冊と言っても過言ではない一品なんだぞ!?」 ……おや? 先程までの意気消沈ぶりが嘘のように、彼が新川さんに噛みつく。 「……ふむ」 そんな彼の激昂を新川さんは飄々と受け流し、祖父が孫に昔話を聞かせるかのように、静かに語り始めた。 「……実は私、乳フェチでしてな」 「……は?」 「かれこれ数十年近く究極の一品を求め続けてきました。映画、写真集、ビデオ、時は流れてDVD、ネット画像……海外に足を伸ばした経験もございます」 「…………」 「しかし、まだこれが究極、という一品に出会った経験はございません。出会った、と思ってもそれは一時の錯覚に過ぎないのです」 彼は怒りを忘れたかのように、人生の先輩である老紳士の言葉に聞き入っていました。それは僕と谷口君も同じです。 「男のエロに対する探求心に終わりはないのです。一冊の本で満足してしまうにはまだ早いですぞ?」 その言葉で彼の肩から、スッ…と力が抜けた。 「……ふん」 全てを納得をしていないような、やや不満げな表情ですが、新川さんの伝えようとしていることは理解したようです。 「この騒動が落ち着いたら色々探してみようぜ、キョン」 「……あぁ」 流石は新川さんですね……おっと。 「新川さん、ここで結構です。止めて下さい」 そうこうしている内に、車は目的地に到着する。そこで新川さんは申し訳なさそうに口を開いた。 「すまない、古泉。私はここまでだ」 「新川さん……」 「ここまで、ってどういうことだよ、とっつぁん?」 「この戦いから降りる、ということでございます」 「そんな!?一緒に戦ってくれないのかよ!?」 「谷口君……新川さんにも色々あるんですよ」 「……谷口、これは俺たちの問題だ。新川さんを困らせるな」 そうです……新川さんには機関内の立場もある。これ以上個人的な戦いに巻き込む訳にはいかない。 「でもよ……俺はまだ、とっつぁんから学びたいことがたくさんあるんだ!」 ……いつの間にそんな仲になったんでしょうか?まるで某監督と某SGのような信頼関係です。 そんな谷口君に、新川さんは眩しいものを見るように目を細めて、感慨深げに語り掛けた。 「……老いぼれからの最後の言葉でございます」 「とっつぁん……」 「……例え愛すべき恋人が出来て、その先に守るべき家庭が出来ても……男とエログッズは切っても切れない関係にございます」 「…………」 「ここで退いてはなりませんぞ、若人たちよ」 そう言って新川さんはグッと親指を立てる。 「…………」 僕たちもそれに倣って無言で親指を立てて返す。 「……行きましょう」 新川さんの言葉を胸に、僕たちは男の意地を張るための戦いに身を投じていった。 新川さんと別れた俺たちは、人家もまばらな町の外れまでやってきていた。 「で、目的地はどこなんだ?」 「すぐそこに見えている、あの家ですよ」 あの家って……あれか? 「凄ぇな、おい。メイドとか出てきそうだぞ?」 広い敷地に三階建て屋上付きの家屋。現代的な建物なので純和風の鶴屋邸ほどの風格はないが、普通の家庭で生まれ育った俺や谷口を威圧するには充分な豪邸だ。 「まぁ、二人も知ってる人物の家ですよ」 こんな豪邸に住んでいる知人に心当たりなんて……あれ? ふと表札に目をやると、そこには見覚えのある名字が記されていた。 ……誰だっけ?どこかで見た覚えはあるんだが……。 「古泉です。少々重要な話があるのですが」 『今鍵を開ける。少し待っていろ』 ん?……この横柄な物言いは……確か……。 俺が脳の片隅から情報を引き出すよりも先に、威圧感たっぷりの扉が開く。 そこから顔を出したのは……。 「……誰だ?こいつ?SOS団関係者か?」 ……おいおい、谷口。 「生徒会長だよ、うちの学校の」 「こんなヤツだったか?」 ……こいつの脳内は女子生徒の情報だけで容量オーバーしてるんじゃないだろうか? 「女子の情報ならまだまだ入るぜ!新任女教師や女子教育実習生もな!」 ……流石だぜ、谷口。 そんな谷口の様子を、眉をひそめて眺めていた会長が苦々しそうに口を開いた。 「……色々と突っ込みたいことはあるが……何の集まりだ、これは?」 「はは……取り敢えず、家の中に入れて貰えませんか?」 「……くだらん」 古泉による今回の騒動の説明を受けた生徒会長が口にした感想はその四文字だけだった。心底呆れ返った様子だったことも付け加えておこう。 くだらんとは失礼な。あんたも自分のコレクションが危険に晒されたら戦うだろ? 「まぁ、会長は一人暮らしなのにエログッズはきっちり隠すムッツリですから」 「なッ!?古泉!?」 「ムッツリか、なるほど」 「ムッツリじゃ仕方ないな」 「……貴様ら全員帰れ」 まぁまぁ……というか、この広い家に一人暮らしって凄いな。 俺たちが通された部屋は三階にある会長の自室だが、各階には子供が喜んで隠れんぼを始めそうなほどの部屋数が存在していた。 「ふん、親が二人揃って海外に赴任してるだけだ」 「ラブコメの主人公みたいな話だな」 「ギャルゲーですね」 「それなんてエロゲ?」 「……貴様ら俺を頼って来たんじゃないのか?話を進める気がないなら叩き出すぞ?」 この手の冗談は通じない人か。流石はムッツリだ。 まぁ、これ以上へそを曲げられても困るし、話を進めるか。 「それでどうするんだ?ハルヒたちから逃げたはいいが、状況はあまり好転してないぞ?」 「取り敢えず、この家に奪還したコレクションを隠させて貰おうと思います。まずはコレクションの安全を確保した上で対策を練りましょう」 自分たちの手元に置いておけない以上は仕方なし、か……しかし、対策と言ってもな……。 「対策ねぇ……」 あの谷口ですら浮かない表情だ。まぁ、相手は頑固一徹猪突猛進唯我独尊の、あのハルヒだからな。無理もない。 そんな風に俺たち三人が頭を悩ませていると、慌てて会長が口を挟んだ。 「待て待て。俺はまだ了承していないぞ」 「そんな……協力してくれないのか?」 「……確かに、お前たちの状況には多少同情する部分もあるが……相手はあの涼宮ハルヒだ。俺にもどんな被害が及ぶか分からん。巻き添えはごめんだ」 「僕たちは負けません。ですから、会長に被害が及ぶことはありませんよ」 「そんな口だけの気休めなど――」 そこで、窓際にいた谷口が似合わない鋭い口調で俺たちの話を切った。 「お喋りはそこまでだ。どうやら、お客さんらしいぜ?」 カーテンの脇を少しだけ開いて、谷口が俺たちに手招きをする。 「お客さん?……まさか!?」 慌てて窓際に近付き、窓から顔を半分ほど覗かせて外の様子を窺う。そこには見慣れないワンボックスカーから降りる、数人の少女たちがいた。 ……そして、その先頭には、見間違えようのない黄色いカチューシャが見えた。 「ハルヒ……どういうことだ、古泉?ここは安全じゃなかったのか?」 「……少々、森さんの情報収集能力を侮っていたようです」 「おいおい……」 ぞろぞろと車から降りてくるSOS団三人娘に森さん。 ……この状況はやばいな。 「……ん?」 もう一人いるな?あの人は……。 「おい、俺は無関係なんだ。揉め事はよそでやってくれ」 「そうは言ってられないみたいだな。アレ、生徒会の書記だろ?」 谷口がクイっと親指で差す先には北高に在籍する長門以外のもう一人の宇宙人、喜緑さんが立っていた。 「喜緑君……?何故ここに?」 というか、生徒会長の顔は覚えてないのに書記の顔は知ってるんだな、谷口。 「校内の美少女データは全てココに入ってるさ。ちなみに、恋人の有無もな。そうかそうか、そういや恋人は生徒会長だったな」 そう言って、谷口はニヤリと笑いながら会長を見やった。 「なッ!?何処でそれを!?」 会長……あんた、喜緑さんと付き合ってたのか。 「……なるほど。この状況で彼氏宅に乗り込む理由はただ一つ。便乗しての排除でしょうね」 「は、排除?何をだ?」 もちろん、エログッズに決まってるだろ。 「……喜緑君がそんな横暴な真似をするはずが……」 「……じゃあ、なんで涼宮たちと一緒にいるんだろうな?」 「それは……」 事前の打ち合わせもなしに、俺たち三人の息の合った弁舌が展開された。 目的はただ一つ。会長の籠絡。 「そんな……まさか、喜緑君が……」 目に見えて動揺している会長に向かって、仕上げとばかりにSOS団最強の論客が穏やかに語り掛けた。 「会長。僕が得た情報によりますと、あなたはかなり喜緑さんに振り回されていますね」 「あ、あぁ……」 だんだんと、会長の台詞が短く、曖昧になっていく。 「このままでは尻に敷かれますね。既にもう敷かれているかも知れません」 「う……」 動揺のせいか、会長には普段の気丈さや不敵さが全く見えなかった。 「ここで一つ、男の威厳を見せ付けるべきではないでしょうか?」 「……そうなのか?」 古泉の一言一言を、新興宗教の教祖の言葉を聞く信者のように鵜呑みにしていく。 「あなたはここで戦うべきなのです」 「……そうなのかも知れない」 ……堕ちたな。 「会長……あなたも一緒に戦ってくれますね?」 そう言って、にっこりと笑みを浮かべて、手を差し延べる古泉。 そして、恐る恐るその手を取る会長。 ……その光景を見て、俺は思った。 あの笑い方をする人間相手に、サインと判子の必要な書類は作るまい……と。 続く
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/3102.html
The melancholy of Cupid 新入生もそろそろ初々しさを失い、彼らもまあ人生こんなもんかという高校生的悟りを開いた頃、俺も高校生最後の一年間に足を踏み入れてそろそろ一ヶ月が経とうとしている。クラス編成はたぶん説明するまでもないだろうな。俺とハルヒはなぜかそのまま繰り上げ文系、古泉と長門は理系クラスへ進級した。単なる偶然かあるいは誰かの意図か四人とも同じ国立を志望していて、俺は模試が来るたびにハルヒの課外講習を受けているありさまだ。ハルヒに付き合ってまで進学校を選ぶなんて、俺も自主性がないのか人がよすぎるのか、どっちでも同じだが。最後には神頼み的ハルヒの力でなんとか試験合格させてもらえないかなどと、甘いことを考えている自分を恥じていたりもする。 SOS団はなんの変わり映えもしない、はっきり言えばマンネリ化だな。昔に流行ったタイトルをリメイク、リキャストして出しなおす英雄モノの映画みたいに、去年のイベントに手を変え品を変え再利用しているのが、今日この頃のハルヒだ。さすがのお前もそろそろネタ切れか、ハルヒ。 俺はといえばあの事件以来、たまにだが、長門を誘うようになった。 たとえば日曜の朝、本を買いにでかけようと玄関で靴を履きながら、ひとりで行くより誰かを連れて行きたいなと考える。妹を連れて行った日にゃおもちゃやらケーキやらの前でじっと動かないし、卒業してから会っていない朝比奈さんを誘えたらいいんだが誘うとまたハルヒの不機嫌の虫が暴れだすだろうし、古泉?この世界が閉鎖空間になっちまってもあいつとだけはデートはしたくない。じゃあハルヒか、あいつは持てる全エネルギーでぶつかってくるんで気が休まらん。 こんな感じで、消去法でいくと長門しかいないわけだ。別に付き合うとか、長門を恋愛の対象として見てたわけじゃない。言い訳じみて聞こえるかもしれないが、俺が出かけるついでに長門も連れて行ってやろうかとふと思うことがたびたびあっただけだ。 休みの日に長門をひとりにしておくべきでないような、なんとなくそんな気になる。殺風景な部屋でじっとしている長門を想像すると、心のどこかにモヤモヤしたものが生まれてしまう。部屋の白い壁と同化してそのまま消え入ってしまいそうな気さえする。 休日の朝、電話をかけると長門もとくに用事もないようでいそいそとついてきた。図書館に行って長門が気の済むまで借りる本を品定めしたあと、たまにだが映画に行ったり、ごくごくたまにだが飯を食いに行ったり、まれに地元のイベントに行ったりしていた。無論、俺が誘うのだから俺のおごりだ。そういう日には不思議と財布の中身にも余裕があった。 一度ゲーセンに行ったときには、長門がファイター系のゲームをはじめてしまって止まらなかったことがあった。 無駄のない動き、炸裂するコンボ技、目にもとまらないコントローラの操作。むかし炎のコマとかあったっけ。ギャラリが集まってきてオオッとかスゲーとか、セーラー服のきゃしゃな女の子がやってるもんだから、やたら歓声が上がったりしていた。 俺はゲーマーの群れから離れて、ひとり缶コーヒーを何本か飲みながら暇を持て余していた。手持ち無沙汰にUFOキャッチャーで取ったぬいぐるみをいじっていた。 二時間くらいしてやっと終わり、長門の妙に達成感に充たされた表情を見て俺は笑った。グッジョブ。おつかれさま。 それから光陽園駅まで戻り、そこで別れる。そんなことを何度か繰り返していた。 「じゃ、またな」 「……」 俺も別れを惜しんだりしないし、長門もいつまでも手を振っていたりはしない。たまに、俺が千二百円くらいかけてやっとゲットしたヌイグルミを大事そうに抱えている以外は。 二人とも極めてドライだった。他人が見れば、兄と妹だと思っても違和感はないくらいにカラリとした付き合いだった。俺はこんな、お互いになんの気兼ねもない関係が続けばいいと思っていたんだ。 ところがそうは思わなかったやつがいた。涼宮ハルヒである。 「キョン、谷口に聞いたんだけど、あんた有希と付き合ってんの?」 俺は飲んでいたお茶を噴いた。長門が読んでいた本から顔を上げた。目を丸くしている。 「な、なにを根拠にそんなでっち上げを!?」 だが予想はしていたことかもしれない。なにもやましいことはないはずなのに、俺は妙にうろたえた。 「あんたと有希が駅前を歩いてるのを何度か見たらしいんだけどね」 「でっち上げだ!濡れ衣だ!冤罪にもほどがある、弁護士を要求する」 「なにムキになってんの。なんでもないならいいじゃないの」 「……わたしたちに特別な関係はない」長門は本に視線を戻してボソボソと言った。 「まあ、キョンが誰と付き合おうが自由だけどね」 ハルヒが横目にお茶をすすりながら言った。内心ほっとした。というかまわりから見れば、俺と長門の関係は微妙で曖昧かもしれんな。 話はそれだけでは終わらない。 翌日俺が部室のドアを開けるなり、ハルヒが叫んだ。 「キョン、有希。ちょっとあんたたち、マジで付き合ってるんじゃないの?」 唐突にハルヒが言った。長門と俺は目を見合わせた。 「なんなのよ、その目と目で暗黙の示し合いは」 ハルヒのイライラ度指数が急上昇してきた。まずい。 「昨日あんたが有希のマンションに入るのを見たのよ!」 うわ……まじか。俺は自宅前で絶世の美女といるところをフォーカスされた有名人のようにうろたえた。 「付き合ってるというわけでもなくてな。いやまあ、ときどき一緒に図書館に行ってる程度なんだが……」 「一人暮らしの女の部屋に上がりこむのはね、世間では付き合ってるって言うのよ」 「お前にとやかく言われる筋合いのことじゃないと思うが」 「あたしが言ってるのはね、あたしに嘘をついてまで付き合ってるのが気に入らないってことよ!」 俺には取り付く島がなかった。 「SOS団は、あたしはいったい何なの、ただの同級生?見せかけの信頼関係だったの?」 「たまにいっしょに出かけるくらいで、お前が考えてるような関係じゃないんだけどな」 「じゃあなんで嘘をついたのよ」 「いやなんというかな、ハルヒ、俺は別に悪気があったわけじゃ……」 どうにもごまかしようのない事態になってきた。古泉に助け舟を求める視線を投げてみるが、この野郎、笑ってやがる。 「有希も黙ってないでなんとか言いなさいよ。あんただけは信用してたのに」 「……わたしは間違ったことはしていないし、言ってもいない」 長門は本から目を離さず、抑揚のない声で言った。それがハルヒの逆鱗に触れたようだ。ハルヒは机をげんこつでドンと叩いた。湯飲みが震えてお茶がこぼれた。 「有希、あんたここから出て行って」 「……」 長門はじっとハルヒを見つめた。それから本棚から本を数冊抜き取って脇に抱え、何も言わずに出て行った。ハルヒのこめかみに青筋が立っている。 「ハルヒ、言い過ぎだぞ。長門は元々文芸部の人間だろうが」 「なによ、事実上SOS団のメンバーじゃないの。あたしは団長よ。上司の言うことは絶対なのよ」 「お前、もうちょっと大人かと思ってたが全然ガキじゃないか」 「あたしに向かって嘘をつく団員なんかクビよ!」 「長門は嘘はついてないだろうが!」 「もう、その辺で」古泉が割って入った。 「気分悪いわ。今日は帰る」 ハルヒはカバンをひっつかんでドタドタと出て行った。ガラスが割れそうな勢いでドアを閉めた。壁の粉がパラパラと落ちた。 「お気持ちは分かりますが、ここは暴走させない方向でお願いします」 古泉がすがるように俺を見る。 「んなこた言われなくても分かってるさ。だがいったいいつになったらハルヒは大人になるんだ」 「待つしかありません。しかし今回の件はあなたに責任がある」 「俺が誰と付き合おうとあいつの許可はいらん」 っていうか、付き合ってるわけじゃないのに俺。 「ですが、嘘は涼宮さんを怒らせる要因にはなります。それに……」 「それに何だ」 「嫉妬だとは考えられませんか」 「ハルヒが嫉妬?」 「前にあなたが涼宮さんもろとも閉鎖空間に行ってしまったときのことを、よもやお忘れではないでしょう」 思い出したくもない……あれは悪夢だ。 「あれは涼宮さんが望んだからそうなった。その要因を作ったのはあなたと朝比奈さんだった」 「まったく……。ハルヒは俺のタイプじゃない」 「なにも恋愛しろと言っているわけではないんです」 いまいましいことに俺は古泉に説教されている。 「あなたの言動は涼宮さんの精神状態に影響するんです」 「じゃあ俺は死ぬまでハルヒの子守りをしなきゃならんのか」 「そうです」 なんてこった。俺は頭を抱えた。 「ですが、徐々に環境を変えていくことはできます。たとえば将来、あなたが別の誰かと結婚することになっても、涼宮さんを暴走させないでいるだけの環境に」 「ハルヒは嫌いじゃない。だがときどき俺の手にあまることもあるんだ。俺自身の人生は俺が決めてもいいだろう?」 なぜか弱腰だ。 「もちろんです」 そのとき、誰かの携帯が鳴った。俺ではなく古泉のほうだった。 「どうやら涼宮さんのイライラが限界に達したようです。バイトに行かなくてはなりません」 「そうか。すまんな」なんで俺が謝るんだ。 「できれば僕がとりなしておきますよ。明日また会いましょう」 しかしまあ、恋愛のレの字もないのに恋愛沙汰とは。俺もヤキが回った。 その日は結局、長門は戻って来ず、ハルヒにも会わなかった。長門は嘘をついたわけではないが、ハルヒに正確なところを伝えていない。それも要因のひとつだ。俺は嘘でお茶を濁そうとした。……なんてこった、俺が悪いのか。ハルヒがわがまま過ぎるのは論外だが。 次の日、俺はなんとかハルヒと和解しようと試みたんだが、ずっと無視されっぱなしで立つ瀬がなかった。ハルヒをなだめたりすかしたりするなんて、俺もうこんな人生いやだ。 その日、ハルヒはとうとう部室に来なかった。当然、長門もだ。 「僕にも立つ瀬がありません」 古泉の和解工作も失敗したらしい。 ── 聞いた話になる。 「涼宮さん、僕たちが出会ってからもう二年が経つんですね」 「なにが言いたいの。愛の告白なら間に合ってるわ」 「そうではありません。僕たち、というのはSOS団のメンバーのことです」 「それがどうかしたの」 「今までいろんなことがありましたね。宇宙艦隊を指揮して獅子奮迅の戦いをしたり、雪山で遭難しそうになって助け合ったり、SOS団の存亡かけて生徒会と戦ったり」 「だから?」 「僕たちはかつてないほどの最高のチームだとは思いませんか」 「まあ、それは認めるわ」 「こんなつまらないことで仲たがいするのはやめましょうよ」 「つまらないこととはなによ。あたしは本気で怒ってるんだから」 「長門さんも悪気はなかったんだと思いますよ」 「あたしは有希のことを言ってるんじゃないの。キョンがあたしに隠れてこそこそしてるのが気に入らないの」 「つまり……どうしろと」 「付き合うのか付き合わないのか、はっきりしなさいってことよ」 「でもあの二人ですから。そう簡単には白黒がつくとは思えないですが」 「古泉君、あんたどっちの味方なの」 「えっ……。もちろん僕は涼宮さんの味方です」 「よろしい」 「、ということなんですよ」 「ということじゃないよ、全然フォローになってないじゃないかよ」 「面目ありません」 ハルヒの腰巾着め。 「あなたは涼宮さんに第一の信頼を置かれている人です。そのあなたが涼宮さんに悟られないように行動しているのが、彼女には気に入らないのでしょう」 「俺は隠れてるわけじゃないんだがな」 「本当にそうと言い切れますか?長門さんを誘うとき、涼宮さんに遭遇しないよう配慮したりしませんか」 ズバリ言われて、ぐうの音も出ない。 「ここはひとつ、オープンに行きませんか」 「どういうことだ」 「二人の状況を正直に話すんです。分からないことは分からないでもいい。どういうきっかけで一緒に出かけるようになったんだとか」 「まあその程度なら。でも、なんでも教える必要があるのか」 「それはもちろん、」古泉はひと呼吸置いた。「あなたがたを引き合わせたのは涼宮さんですから」 休み時間に携帯が鳴った。 「もしもし、キョン君?喜緑です」ひさしぶりに聞く声だ。 「これはどうも、おひさしぶりです」 俺はハルヒに聞こえないようにと教室を出た。喜緑さんにはいろいろと影になり日向になりお世話になっていて、困ったときの救いの女神だ。 「あの……長門さんのことでちょっと話したいんですけど、今日は忙しいですか?」 「いえいえ、俺はいつでも暇ですよ」 ここんとこSOS団の活動は停止している。 「じゃあ、学校が引けたら光陽園駅前で会ってもらえます?」 「いいですよ。六限が終えたら電話入れます」 長門とハルヒの仲裁に来たのだろうか。今日、ハルヒはとうとう口を利かなかった。俺もムキになって無視し続けた。子供っぽいにもほどがある。 ホームルーム後、俺は古泉に電話して今日は休むと伝えた。 「長門のことで喜緑さんに呼び出された」 「ああ、そういうことですか。行ってらっしゃい。涼宮さんには伝えておきます。それはそうと、昨日の神人狩りはすごかったですよ。見せたかったです」 あんまり見物したくなるようなシロモノじゃないんだが。 「おひさしぶりです。先日はいろいろとありがとうございました」 ついこないだ会ったばかりなのに、なんだかずいぶん昔のことのような気がした。 喜緑さんは卒業後、たぶんハルヒの志望校と同じなんだろうけど、大学生になり、見た目もずいぶん大人っぽくなった。セーラー服じゃないからかもしれないが、なんだか妙にお姉さんっぽい雰囲気に包まれていた。 喫茶店に入ると、喜緑さんは本題を切り出した。いつものように前置きがない。 「長門さんがあんまり強情なので、情報統合思念体が解任しようかと動いてるんです」 「そんな。長門はよくやっていますよ」 「いつだったか異時間同位体とのリンクを拒んだ理由、覚えてます?」 「ええ。長門自ら、“自分がいやだから”とか言ってましたっけ」 「あの頃から長門さんは、なんというか今の、現時点の自分の個を主張する傾向にあって」 「もともと主張がなさすぎたから、ふつーになったんじゃありませんか。朝倉みたいに主張が強すぎるのも問題ですが」 「ええ。それは分かるんです。でも任務に支障をきたすようになってきたんで、上のほうでも懸念してまして」 「今回のことは俺が悪いんです。なんというかこう、人間には曖昧な部分がたくさんあって、たまに関係がこじれるんです」 「分かりますわ。私が来たのはただ、長門さんに任務を遂行するよう伝えるためなんです」 「喜緑さん、思念体の言いたいことは分かります。でもあんまり長門を叱らないでやってください。悪いのは俺とハルヒなんです」 喜緑さんはにっこりと微笑んだ。 「キョン君は優しいんですね」 「長門と知り合ってからいろいろあって、一緒に危機を乗り越えたり、異世界に行ったり、泣いたり笑ったりがあって。今では俺と長門の間には特別な信頼みたいなものがあるんです。そこにハルヒが子供みたいに嫉妬して、こういう状態になってしまったわけで。なにをされても怒ることすらなかった長門に、今は守りたいものがあるんです」 長門のことになるとなんでこんなに饒舌になるのか、自分でもよく分からないんだが。 功を奏したのか、喜緑さんは少し考え込んだふうだった。 「そうなのですね……分かりましたわ。それにしても、長門さんもずいぶん人間っぽくなりましたね」 「ええ。みんなが思うよりずっと人間臭いと思います」 「たぶん、あなたのその感性が彼女を変えたんだと思いますよ」 「え……」 言葉にならなかった。 「有希のマンションでなにしてたのよ」 翌日の四限の終わりに、弁当を持って外に出ようとしたところ、ハルヒが唐突に切り出した。 「あんた、有希のマンションでなにしてたのよ」 「なんというかな。いつだったか話したろ、長門が親類のところに引っ越すとかどうとか」 「あれとどう関係があるのよ」 「いや、あれからときどき身の上相談に乗ってやっててだな」 「それで付き合うようになったわけ?」 「いや、だから一般に言うような男と女の付き合いじゃないんだって」 「じゃあなんで隠してたのよ。やましいことがあるからでしょ」 「隠してたわけじゃなくて、誤解されそうだったからあえて誰にも言わなかったというか。谷口はアレだし」 「隠したってもう周知の事実よ」 それはまあ、人の噂も八十日というから気にはしてないんだが。 「あたしは隠れてコソコソされるのが嫌いなの」 「ああ、分かってるよ。悪かった」 「謝ってるのそれ」 「そうだ」 「まあ、いいわ。最初からそう説明してくれれば……」 言い淀んだハルヒは、なにごとか考えているようだった。 「あんた、有希とまじめに付き合うとか考えないの?」 「うーん……」 俺は少し考え込んだ。俺にとって長門って何なんだろう。同級生、部活のメンバー、頼れる宇宙人、でもときどき守ってやらないといけない宇宙人、ほかにもなんだかあるが。 「分からん。そうなるのかもしれないし、ならないのかもしれない」 しかしながらハルヒの次の一言は、正直こたえた。 「キョン、有希を泣かせたらあたしがタダじゃおかないからね」 Someday over the rainbowへ
https://w.atwiki.jp/nrtk/pages/69.html
名無し。 特徴がよく分からないが名無しでレスをしSSをアップしたことから解析されバレたようだ。 ただし言っていることはまとも。 SSアップして豆特に対抗するの巻 268 焼き鳥名無しさん [sage] 2010/11/11(木) 15 33 56 ID ??? 上卓の雑魚が特上民様に聞きにきたんだろ 1800台にありがちなカンしてるし SS貼れない時点でお察し 276 焼き鳥名無しさん [sage] 2010/11/11(木) 15 38 08 ID ??? 特上民様ってw 特上民とかむしろ恥じるレベルだろ 鳳凰にもあがれない雑魚ってことだからね 283 焼き鳥名無しさん [sage] 2010/11/11(木) 15 40 39 ID ??? . 276 特上にも来れないお前に言われてもな 表示なしスレに帰れ雑魚 284 焼き鳥名無しさん [sage] 2010/11/11(木) 15 41 34 ID ??? . 283 いや、六段だわ 七の手前だからこそ上にあがれない雑魚って俺は思ってるんだけどね 288 焼き鳥名無しさん [sage] 2010/11/11(木) 15 43 00 ID ??? , 284 六段騙りか SS出してから言えよ三段雑魚 293 焼き鳥名無しさん [sage] 2010/11/11(木) 15 49 12 ID ??? , 288 はいhttp //www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1244437.jpg 今月いまいちで2000下回っちゃったけど 297 焼き鳥名無しさん [sage] 2010/11/11(木) 15 53 20 ID ??? 833 かくし~ 1994M 六段 834 狂っぽー 1994L 六段 836 白黒神 1994K 六段 837 SYV SYS 1994M 六段 838 喜緑江美里 1994M 六段 839 爆肉初段 1994K 六段 840 鬼九さんだ 1994K 六段 841 NIN 1994M 六段 842 brbr00 1994K 六段 843 アザミウマ 1994M 六段 844 元気もりお 1994L 六段 300 焼き鳥名無しさん [sage] 2010/11/11(木) 15 54 29 ID ??? 1200試合以上だからMだね 302 焼き鳥名無しさん [sage] 2010/11/11(木) 15 55 45 ID ??? 833 かくし~ 1994M 六段 838 喜緑江美里 1994M 六段 841 NIN 1994M 六段 843 アザミウマ 1994M 六段 これで男冥利で成績調べれば一発? 304 焼き鳥名無しさん [sage] 2010/11/11(木) 15 57 15 ID ??? 粘着アンチ消えたか 306 焼き鳥名無しさん [sage] 2010/11/11(木) 15 57 37 ID ??? , 302 一発も何もこれはほぼかくし~本人で決まりやろ 307 焼き鳥名無しさん [sage] 2010/11/11(木) 15 58 25 ID ??? , 304 目の前にいるじゃんw 308 焼き鳥名無しさん [sage] 2010/11/11(木) 15 59 20 ID ??? 「かくし~」って書いてるから隠したのと勘違いしたんじゃないか?www 312 かくし~ [sage] 2010/11/11(木) 16 00 42 ID ??? おい隠してねーし!
https://w.atwiki.jp/cabal-zinbutsu/pages/43.html
このページはhttp //rara.jp/cabalss/page11460.htmlからの引用です [トップに戻る][ワード検索][フォトアルバム] [ランキング] [管理用] [▼掲示板始めるならRara] ~ ResForm ~ 記事No.11460に対する返信フォーム 土星 ルル 水星 ダークドレアム・ジョクトラ・アヒャヒャヒャヒャ 投稿者 / :名無し投稿日 / :2010/05/22(Sat) 23 46No.11460 Part19 本人ブログ http //yukkyruru.blog12.fc2.com/ ~今までの流れ~ ジョクトラの見栄っぱりなブログからSS張られてDT祭りにwそしてスカイプチャットのRMTを暴露してるSSが張られる 顔真っ赤になった ジョクトラ が光臨。SS貼った奴を名指しで書き込みし、スレを埋没させようと必死に関係ないスレあげまくったがあえなく浮上 そしてブログにて、このスレに対する煽り文章書き込み。その後に急に謝罪文を書き込むが、謝罪文に対するレスで 「解散などしませんよ? 証拠もないのにいちゃもんつけないでください。」 と反論www 学校で脳内2次元彼女の写真をクラスの女にみせられて喧嘩したが、負けて指骨折したらしいwwwww 土星隔離で「こいつの彼女ってゲームで出会って写メ交換しただけでリアルであったこともない」と暴露されるw ブログでも 「もう晒しの対応????めんどくさくなってきた」とあるんだけども何が対応したのか日本語がry その後にゲーム内での乞食発言連発のssが張られる。←GJ ジョクトラブログにリアル女キャラをネカフェに誘うなよと文句書かれるが、 それに対して「一緒にCABALしたかったんだw それぐらい許せ!」とコメント。このSSが張られて直後に複数のルル被害者っぽい人からの書き込みありw 写真もらったならうpしろという流れに・・・ そして休止のお知らせが出たが3日後ぐらいに水星戦争に参加目撃が・・・ ついにブログPASS付け。 その後赤文字にて名誉毀損だといいまくってる多分辱トラ(文字の書き方に注目最終SSに添付) KIDの可能性もあるけど、 、の使い方を見ると多分辱トラの可能性が大。 いろいろとNetに関する名誉毀損のURL引っ張ってくるが、全てリアルが特定されてる事が最前提となっている。 その後、Net上のハンドルだけでも名誉毀損が成立出来ると書いてあるURL引っ張ってきているが、 そのアドレスhttp //cabin.jp/miyomiyo/file3.html←こちらには 『リアルが特定されてない状態でのハンドルのみによる名誉毀損の判例が1個ものってない!』 Linkもいろいろあるが、Linkでも名誉毀損が成立してる判例をみるとリアルが特定されてる場合に限定されている。 頑張って調べたKIDジョクトラどんまい^^な流れに・・・ さらに顔写真を晒したのはダークハートという ルルの特定しているssもへんてこりn日記よりssが追加される。ついにPASS付のブログからss転載。その後パス解除し、記事全部削除して当スレを意識した記事ないように変わるw せっかく鎮火しかけてきたのに自らまたネタを提供するジョクトラ君^^ SS左 左2列 童貞丸出しのチャットSS 右列 赤枠に注目 SS右 左列上 RMTを自ら暴露してるスカチャss 左列下 さらした奴を名指ししてるss 右列 すれ埋めようと必死に他ログあげてる(時間に注目 Re 土星 ルル 水星 ダークドレアム・ジョクトラ・アヒャヒャヒャヒャ 名無し - 2010/05/22(Sat) 23 46No.11461 SS左 左 ブログで当スレを煽ってるss 中 謝罪ss 右 証拠ssあるのに証拠もないのにと言い張ってるss SS右 左列上 脳内彼女の写メを晒されて喧嘩したと報告ss 左列下 土星隔離にて実際の状況っぽい暴露 右上 ジョクトラがブログで対応めんどくさくなってきた発言 Re 土星 ルル 水星 ダークドレアム・ジョクトラ・アヒャヒャヒャヒャ 名無し - 2010/05/22(Sat) 23 46No.11462 SS左 左1列PTチャットでひたすら乞食してるゲーム内ss (土星の皆さんシャイサラのマスターは水星ではこんなんですよw 中列上 当スレにジョクトラが光臨・スレを煽ってくる (SS1枠あまったので入れてみた) 中列下 脳内DT卒業報告SS 右列上 当スレ煽りと彼女の家に言ってたという報告SS 右列中 写メ見せられて喧嘩報告SS 右列下 リアルの知り合いか相当身近な奴っぽい暴露SS (土星隔離より) SS右 上 土星の身内より知り合いをネカフェに誘うなとクレームを書かれる。 それに対し、一緒にCABALを誰かとやってみたかった。許せとコメント 下 当スレにルル被害者と思われる人からの書き込み。 Re 土星 ルル 水星 ダークドレアム・ジョクトラ・アヒャヒャヒャヒャ 名無し - 2010/05/22(Sat) 23 47No.11463 SS左 赤文字が名誉毀損に該当と盛り上がってるss SS右 上2段目コメ 赤文字レス続き 3段目コメ 現在の最新の判例に伴う抜粋コメ 4段目コメ 目には目的なレス Re 土星 ルル 水星 ダークドレアム・ジョクトラ・アヒャヒャヒャヒャ 名無し - 2010/05/22(Sat) 23 47No.11464 SS左 へんてこりn日記より追加。 ジョクトラが顔晒しはダークハートと特定してるss SS右 ついにPASS付ブログからの日記転載。 Re 土星 ルル 水星 ダークドレアム・ジョクトラ・アヒャヒャヒャヒャ 名無し - 2010/05/22(Sat) 23 50No.11465 SS上 スカイプチャットが晒されて顔真っ赤で光臨してるジョクトラ君 SS左下 晒されたスカイプチャット SS右下 ジョクトラがクロネコに絡んでるss クロネコの的確な一言が・・・ Re 土星 ルル 水星 ダークドレアム・ジョクトラ・アヒャヒャヒャヒャ 名無し - 2010/05/23(Sun) 08 09No.11467 また更新停止だってよ逃げるぐらいなら最初から黙って叩かれてればいいのにな Re 土星 ルル 水星 ダークドレアム・ジョクトラ・アヒャヒャヒャヒャ 名無し - 2010/05/23(Sun) 23 13No.11479 タイトル しばしば、ブロク更新停止 しばしブログ更新停止って書きたかったのか・・ それとも僕はしばしばブログ更新停止するよ!の意味なのか・・ 前者だろうな・・・こいつなら。 使い方間違ってるよ!! Re 土星 ルル 水星 ダークドレアム・ジョクトラ・アヒャヒャヒャヒャ 名無し - 2010/05/23(Sun) 23 31No.11481 こいつだから日本語よくわからないんだって しばしばの意味間違って使ってる小学生だろ Re 土星 ルル 水星 ダークドレアム・ジョクトラ・アヒャヒャヒャヒャ 名無し - 2010/05/23(Sun) 23 39No.11482 No.11481 これでも高3らしい Re 土星 ルル 水星 ダークドレアム・ジョクトラ・アヒャヒャヒャヒャ 名無し - 2010/05/24(Mon) 02 00No.11485 小学生?世の中には成人でも日本語をいまいち把握してない人だっていっぱいいるだろ? 皆日本語完璧なんですか。そうなんですね。 俺以外完璧なんですね。よーくわかります。 確かに完璧な奴はいない、が辱トラは酷過ぎるんだ低脳すぎるんだw Re 土星 ルル 水星 ダークドレアム・ジョクトラ・アヒャヒャヒャヒャ 名無し - 2010/05/24(Mon) 04 33No.11486 しょうがないじゃん こんな顔なんだし milkmans amateurs anne heche nude crucolerca79- 2010/05/24(Mon) 09 03No.11489 【Home】 http //www.halloffire.org/node/3609hush hush teenage webcamhttp //wowapireference.com/content/massage-pioner-113adult offensive t shirtshttp //www.hilaryduffchat.org/2010/05/21/massage-pioner17320.htmlmature women wearing boots youtubehttp //stressfreeplan.com/?q=node/2477gretchen mol nudehttp //buyadsblog.com.au/node/2068kristin kreuk nude Re 土星 ルル 水星 ダークドレアム・ジョクトラ・アヒャヒャヒャヒャ 名無し - 2010/05/24(Mon) 09 29No.11491 ↑まあ見りゃわかるけど中国のウイルスサイトだから踏むんじゃないべ Re 土星 ルル 水星 ダークドレアム・ジョクトラ・アヒャヒャヒャヒャ 名無し - 2010/05/24(Mon) 14 45No.11497 ブログの更新停止といって数日しかたってないのにまた更新するジョクトラさんはやっぱさすがですね!w 僕たちの期待を裏切りませんねwww Re 土星 ルル 水星 ダークドレアム・ジョクトラ・アヒャヒャヒャヒャ 名無し - 2010/05/24(Mon) 16 20No.11499 ねぇ、ブログのネットでしか出張できない人って何?ネットでどっか出張しに行くの?ねぇ、何? Re 土星 ルル 水星 ダークドレアム・ジョクトラ・アヒャヒャヒャヒャ 名無し - 2010/05/24(Mon) 16 27No.11500 Casvaとかワチャマのこと俺よりガキ臭いとか馬鹿にしててワロタwwwwwwwwwww これが五十歩百歩ってやつですね^^ Re 土星 ルル 水星 ダークドレアム・ジョクトラ・アヒャヒャヒャヒャ 名無し - 2010/05/24(Mon) 19 05No.11502 三次元の彼女頑張って作れとかお前に言われる筋合いねえよwwwww スカイプで女のギルメンひっかけて話してればそれで彼女かよおめでてえwwwwwwww Re 土星 ルル 水星 ダークドレアム・ジョクトラ・アヒャヒャヒャヒャ 名無し - 2010/05/24(Mon) 19 52No.11503 想像以上に顔真っ赤にしすぎてワロタwwwww Re 土星 ルル 水星 ダークドレアム・ジョクトラ・アヒャヒャヒャヒャ 名無し - 2010/05/24(Mon) 20 04No.11504 初心者さんジョクトラさんがカバってくれてますよ!!! いい友達がいて羨ましいですwwwwwww 同種族同士がんばってください!!! Re 土星 ルル 水星 ダークドレアム・ジョクトラ・アヒャヒャヒャヒャ 名無し - 2010/05/24(Mon) 20 23No.11505 今ようやくPCつけた。 朝7時半~22時までで休憩3時間。鬼畜です。足痛いです。眠いです。 そして晒しを見たが、日本語間違ってる?そもそも完璧な人間など存在するのか? あ、ネットでしか出張できない人でしたか。すいませんw 小学生?世の中には成人でも日本語をいまいち把握してない人だっていっぱいいるだろ? 皆日本語完璧なんですか。そうなんですね。 俺以外完璧なんですね。よーくわかります。 精神年齢が低い高3ですよ^^ 自分今バイト&部活&学校&遊び&塾で忙しいので!(あ、このことリア充っていうのかな?) 皆さんはネト充ですかね?ネト充楽しそうですね。2次元の女の子が彼女ですか? 3次元頑張ってつくりましょうね^^ さぁてテスト終わったので、リア充になってきますw あ、このことについて書くのでしたら晒しじゃなくてブログにコメお願いします。 あと、晒しに初心者さんのことが書かれてるけど 皆さん精神年齢が低いですね。(初心者さんは別ですけど) 俺よりガキ臭いです。 ここまで言われたら、反論がしたくなると思いますが 晒しではなく、このブログにコメください^^ ゲームに入ってるときにでもネタwisなど送ってくれるとブログ更新とかもできるのでお願いします。 あ、ブログ更新停止というのはcabalは戦争にしか参加する時間がないということだけど cabal以外のニコニコとか毎日の楽しかったこと、つらかったことなども書いていきますので ブログ見てくださると感謝です。ついでにコメもよければ^^ なんかつっこみ所多すぎるけど、前初心者ですがのss晒してこいつに近寄るとPKされるから近寄るなwwwwwとか書いてたくせに何いっちゃってるのこいつ。10時に帰ってきて眠い、足痛いとか言ってるなら深夜1時すぎにパソコンつけてブログ書いてないで寝ろよ。 20件以上レスがつけられない設定になっています。
https://w.atwiki.jp/wasmousou/pages/128.html
妄想スレッドその1に投下されたSS 料理 16の夜 罰ゲーム 幼稚園児対策 理沙子さんSSその1 お金がない 天空の門 燃えドラ2006 ~ぽっこりV戦士~ 龍子総帥と石川補佐その2 Starry Eyes $貧SSその3 だ~れだ♪ ロリ社長 ロリ社長2 ロリ社長3 レッスルエンジェルス学園 レッスルエンジェルス学園2 レッスルエンジェルス学園・番外編その1 レッスルエンジェルス学園・番外編その2 レッスルエンジェルス学園3 レッスルエンジェルス学園・番外編その3 レッスルエンジェルス学園4 プロジェクトD ~挑戦者たち?~ マイティ祐希子 vs ギャル曽根 マイティ祐希子×越後SS ライラSS 富沢への手紙 ゆっこSSその3 柳生SS 柳生SS~社長SIDE~ 八島SS ドキッ☆メガライト社長の華麗なる日々~ポロリなんかねぇよ~ 家族や友人、親戚が応援に来たら 真帆SS 姉、ちゃんとプロレスしようよっ!その6
https://w.atwiki.jp/sasaki_ss/pages/1544.html
ep.05 特異点 (side kyon) 朝倉のマンションにとりあえず荷物を運び込む。我が家では到底収容し切れそうになかったからな。 組み立て式のロッカー箪笥も別途頼んであるので、佐々木の住む場所が決まり次第持っていってやらないといけない。 朝倉が佐々木を連れて夕食の買い物に出たので、俺はその間に一度アパートに戻り、明日の講義のテキストを持って来た。 朝倉が予習をする必要はないが、一般人たる俺には予習が必要だ。第二外国語があるのでしっかりやっておかないと明日困る ことになるからな。 俺が予習を終え、キッチンからカレーの匂いが漂ってきた頃に長門達が到着した。もう一人の参加者は来ていないが、恐らく 夕飯の後に来るのだろう。 長門は見慣れた制服姿ではなく清楚ではあるが巷の女子大生のようなおしゃれな服を着て化粧までしていた。元のつくりが 良いので化粧をしなくても十分美人だったが、さらに綺麗になっているな。髪も少し伸ばしたようだ。古泉もニヤケハンサム ぶりにますます磨きがかかっていやがる。相変わらず一分の隙もないファッションで、髪も少し染めている。 古泉にはツレが一人いた。最後に入って来たそいつの顔を見た瞬間、俺の思考にフラッシュバックが発生する。 橘? 何でお前がここにいる? 橘京子は俺の視線に気付き、不思議そうな顔で視線を返してくる。ああ、そうなのか。こいつは俺の知っている橘じゃない。 (side sasaki) 朝倉さんが情報操作で長くしたダイニングテーブルの上を片付け、お客を迎える用意をしているとエントランスのベルが 鳴った。ちょうど予習していたテキストを片付け終わっていた彼が出てお客を迎え入れる。 入ってきたのは長身の男性一人と小柄な女性二人だった。皆、絵に描いたような美男美女ばかりで、私はちょっと気後れする。 エプロン姿の朝倉さんもキッチンから出てきた。 まず、彼がお客達に朝倉さんと私を紹介する。ショートカットで無表情な女の人は、何もかも見通すような視線を私に向け、 長身で少し髪の長い男性は慇懃な態度でにこやかに頭を下げ、栗色の髪をツインテールにした女の人は穏やかな表情で丁寧に 会釈をした。 今度はお客が自己紹介する番だ。長身の男性が彼に素性を明らかにしていいのかと尋ね、彼が頷く。 「はじめまして、佐々木さん。古泉です。彼から聞いていると思いますが、『機関』という組織のメンバーです。京都で 涼宮ハルヒさんのお世話をしています。では長門さん」 「……長門有希。朝倉涼子の上司」 ショートカットで無表情な女の人は二言で自己紹介を済ませた。何やら神秘的な雰囲気が漂い、ちょっと怖い感じがする。 朝倉さんとは同じ宇宙人でも随分と性格が違うようだ。 もう一人の女性は古泉さんが紹介してくれた。 「彼女は橘京子。僕と同じく『機関』のメンバーで、東京での窓口としてあなた方を担当します」 「橘です。よろしくお願いします」 橘さんはツインテールを揺らさずに優雅に会釈した。 「彼女は法学部に在籍しています。学内にも何人か外部協力者がいますので、いざという時は頼って下さい」 「さすがだな、もう体制を整えたのか」 彼が半ば呆れ顔でボヤくと、古泉さんは前歯が光りそうな爽やかな笑顔を浮かべた。ちょっと胡散臭いかも。 「元々はあなたと朝倉さんの監視のために要員が配置されていたんです。なので、今回はそれをちょっと増強した程度 ですよ」 彼は納得顔で苦笑する。 「やれやれ、相変わらず監視がついてたか。面白くはないが、助かったこともあるから仕方ねえな」 彼に監視がついているということは、私も監視対象なのだろうか。そんなに重要……かもしれない。記憶が戻ったり、彼の 言う力が戻ったりすれば。でも、今の私は存在しないはずの、何もできない記憶喪失の小娘だ。 「とりあえずみんな手を洗って席についてね。長門さん、今日は特製カレーを用意したわよ」 朝倉さんの明るい声で何となく漂っていた緊張感が解ける。 「……朝倉涼子のカレーは久しぶり。楽しみ」 長門さんが無表情で2センテンスしか言わないのは別に機嫌が悪いからではなく、元々こういう人らしい。彼にそのことを そっと尋ねたら、 「そうだ。別に怖くないから安心していいぞ」 と言われた。他の人たちは私に緊張感は与えないが、だからと言って安易に信用してはいけないんだろうな。 朝倉さんは大鍋二つになみなみとカレーを作っていた。朝のうちに一部仕込んではあったけど、いずれにせよ凄い量だ。 ご飯は足りるのかと思ったら、台所にあった炊飯器がどうみても業務用の大きさになっている。情報操作で大きくしたの だろうか。 「そうよ。長門さんてあの体で物凄く食べるのよ」 朝倉さんはそう言って、どんぶりのような皿に山盛りのカレーを寄越した。他の人達はまあ普通だ。 「あら、ちょっと出遅れちゃったかしら?」 玄関で声がする。最後のお客が到着したようだ。でも、ベルも鳴らなかったし玄関が開閉した気配もない。 「ああ、朝比奈さん、お待ちしてました」 彼がいそいそと迎えに出る。明らかに態度が違うのは何故だろう。その理由は彼の後について入って来た人物を見て理解 できた。栗色の長い髪、年齢不詳だがこの部屋の誰よりも美しく愛らしいと思われる容貌、胸元の開いた白いブラウスと黒の ミニスカートはOL風とも女教師風とも見える。そして、何よりも私の何倍あるか分からない素晴らしい胸部の盛り上がり。 なるほど、彼はこういうタイプに弱いのか。思わず自分の胸を見て溜息をついてしまう。顔を上げると長門さんが無表情で じっと彼を見ていた。長門さんも私同様細身なので同じ気持ちなんだろうか。 「はじめましての方もいらっしゃるわね。朝比奈みくるです」 朝比奈さんは優雅に会釈して、空いていた席に着いた。 「朝比奈さんは未来人だ」 隣にいる彼が耳打ちする。 「関西にいるSOS団員の朝比奈さんは若い頃の彼女だ。こういう場に姿を見せるのは異例なんだ」 朝倉さんのカレーを長門さんが楽しみにしている理由が良く分かった。短時間で用意したのに、カレー専門店にも勝るとも 劣らないおいしさだったからだ。みんな朝倉さんを褒めた後はカレーを堪能している。全員に褒められた朝倉さんの頬に ちょっぴり誇らしげな赤みがさしていた。 食事中は仕事の話禁止という不文律があるようで、皆世間話や近況を伝え合うのに終始していた。古泉さんと長門さんは、 涼宮さんと同じ京大の学生で、古泉さんは法学部、長門さんは工学部に通っているのだそうだ。 「涼宮はどうしている? 一緒に行くって騒がなかったのか?」 彼が尋ねると、古泉さんがスプーンを置いて答えた。 「鶴屋さんと朝比奈さんにお相手をお願いしてきました。涼宮さんが言うことをきくのは、あなたがいない今となっては 鶴屋さんだけですからね。今頃は鶴屋邸で大騒ぎしていると思いますよ」 鶴屋さんというのは彼や古泉さんの一年上の先輩で、鶴屋ホールディングスという財閥のお嬢様だが、とても気さくで元気な 人だそうだ。 「なるほど、後でお礼のメールを打っておくか」 「ええ、是非そうしてあげて下さい。鶴屋さんもあなたに会いたがっていましたよ。大学の方だけでなく、ご当主の お手伝いも始められたので忙しくされていますが」 「鶴屋さんのバイタリティをもってしても大変なんだろうな」 「ええ。それにご当主の体調も優れないとかで、婿探しも始めたそうです」 「そりゃ大変だな。古泉、お前なんかいいんじゃないか」 水を向けられた古泉さんは、笑顔を崩さないまま首を振る。 「滅相もない。僕じゃ力不足ですよ。それより鶴屋さんは未だにあなたにご執心みたいですよ」 「いやいや、俺もお前と同じだよ。滅相もないって奴だ」 二人は笑い合う。古泉さんが敬語なのは別に遜っているわけではなく、こういうキャラクターを作っているようだ。 「しかし、佐々木さんは予想以上にお美しいので驚きました。街を歩けば若い男性の十人中八人は振り向くんじゃないで しょうか。あなたがえらくご執心されていたのも納得できます」 「古泉、お前は記憶にないだろうが、改変前にも俺に同じ台詞を言っていたぞ」 「おや、それはつまり僕の佐々木さんに対する評価が正しいという意味ですかね?」 「知らん」 彼はつっけんどんに応じて苦笑する。 何か非常にお尻の辺りが落ち着かない気がする。古泉さんの褒め言葉は巧言令色の類なんじゃないかと思う。 食事が終わり、朝倉さんが飲み物を出した。コーヒーの人、紅茶の人、それに緑茶の人もいる。緑茶は朝比奈さんが持参した 茶葉を使って淹れてくれた。彼が言うには朝比奈さんのお茶は絶品だそうだ。私はコーヒー派だが、試しに飲ませて もらったら確かにおいしかった。未来でもお茶はあるんだろうかと尋ねたら、SOS団の活動をしている時にいろいろ研究 したのだそうだ。未来にお茶があるかどうかは禁則事項とやらで教えてもらえなかった。 朝倉さんを手伝って後片付けをする。朝倉さんと橘さん、それに私以外の四人はダイニングの隣の畳部屋に移動し、 ちゃぶ台を囲んでいる。朝倉さんと橘さんは上司に話を任せ、紅茶を手に大学の話を始めた。私はちょとポツン状態に なったが、彼が手招きしたので隣に座る。 私が座ったのをきっかけに、彼が徐に口を開いた。 「さて、いろんな意味で遠路はるばる参集してもらい申し訳ない。早速だが、このとおり昨日突然二年前の姿のまま記憶を 失った状態で出現した佐々木について、みんなの調査結果と意見をもらいたいんだ。本人を前にして言い辛いことがある かもしれないが、遠慮は要らない。ありのままを聞かせて欲しい」 最初に古泉さんが手を挙げた。 「『機関』で再調査しましたが、基本的には二年前の状況と変わっていません。佐々木さんご本人の情報はなく、ご両親に ついても不明なままです。全国の佐々木さんをしらみ潰しに当たったとしても、佐々木さんのご両親である証拠が存在 しない以上、我々としては何も手が打てません。また、世界改変能力についても現状それを確認できる手段はありません。 閉鎖空間の存在も対応する超能力者が特定できず不明なままです」 「要するに何も分かっていないということか?」 「ええ、残念ながら」 古泉さんが申しわけ無さそうに言い、笑顔が苦笑に変わる。既に彼に言われていたことだが、改めて確認されるとちょっと 落ち込む。せめて彼が両親の片方の名前だけでも覚えていてくれれば良かったのだが、常識的に考えて友人の親のファースト ネームなどというものは、余程親しいか、あるいは印象深いものでないと覚えていないだろう。 次は朝比奈さんだ。彼女の説明によると、私が最初に出現したのは彼が私の家があったと主張する関西のある場所だという。 自分自身にその記憶がないので尋ねると、その場で朝比奈さんがすぐに公園に移動させたのだそうだ。未来人の持つタイム トラベルの道具は空間移動にも使えるらしい。恐らくは特定の時間と空間の位置つまり四次元の座標を使って移動するから、 三次元すなわち同じ時間軸上の別の座標位置に移動することも可能なのだろうと私は推測した。 朝比奈さんは説明を続ける。 「少なくとも我々の認識は、佐々木さんは今でも時空の歪みです。その証拠に我々は佐々木さんの出現を観測できました。 我々が観測した二年前の時間平面に突然出現した時空の歪み、キョン君の主張によると少なくとも今から四年前の春から この時空に存在していたはずのそれと現在の佐々木さんを比較したのですが、驚いたことに完全に一致しています。 つまり二年前の時空の歪みは佐々木さんであったと結論できます。しかしながら、その二年前のイベントの前後の時間 平面上には、昨日に至るまで佐々木さんの存在は観測できません。これについては謎のままです」 彼が手を挙げて質問する。 「朝比奈さん、今の時間軸はずれていないんですか? 確か二年前の俺に朝比奈さんは規定事項からの逸脱と未来の消滅を 警告しましたよね。今、朝比奈さんがここにこうしているということは、二年前の警告は外れたと解釈して良いんですか?」 朝比奈さんは大きく頷いた。 「はい、あの時のキョン君の状態は極めて危険でした。自分が死ぬか、涼宮さんを殺す可能性が高かったんです。もし、あの 時にキョン君がそうした行動に出ていたら間違いなく既定事項は満たされず未来は消滅していました。幸いにも私の記憶の とおりキョン君は涼宮さんと距離を置くことで、どちらかの死を回避したんです。それはいいのですが、あの時キョン君が 言った佐々木さんという名前が私は非常に気になったので前後の時間平面を調べていました。すると、ここの時間で昨日の 午後、二年前にキョン君がいた場所に突然時空の歪みが発生し佐々木さんが現れたんです。TPDDあるいはそれに類する 装置の使用を疑いましたが、その形跡はありませんでした」 彼は腕を組んで考え込む。私は自分が何をしたのか覚えていないので答えようがないし、何の助けにもならない。 「朝比奈さん、昨夜朝倉とも話したんですが、佐々木は涼宮の改変に逆らいながら時間軸の方向に向かって改変を行ったん じゃないですか」 「ええ、その可能性が一番高いです。しかし証拠はありません。うふふ、キョン君、良い推論です。この二年で見違える ほどに成長しましたね」 彼は照れて頭を掻いた。朝比奈さんは確かに魅力的だが、ここまでデレデレしているとマヌケ面とでも言いたくなる。しかも それって朝倉さんが言っていたことじゃなかったっけ? 「私の話は以上です。長門さん、後はお願いします」 「……了解した」 長門さんは短く応答して話し始めた。 「……情報統合思念体はこれまでの状況を解析し、今ここに存在する佐々木沙貴は特異点であると暫定的に結論した。 より通俗的な表現をすれば、過去の経緯を持たず現在の時間平面との親和性も持たないにもかかわらず存在している状態。 彼女の存在そのものは因果律からは肯定できない。ただし、それが世界の崩壊あるいはリセットにつながるものであると いう証拠は今のところ存在しない。よって、情報統合思念体は暫定的に現状維持を選択した」 「あー長門、とりあえず二点確認させてくれ。まず、ここにいる佐々木のこれまでの人生に関する情報は消滅しているという 理解でいいんだな?」 「……そう」 「ならば次の質問だ。ゆえに俺の記憶は残っているが、佐々木の記憶が戻ることはないということだな?」 「……恐らく。ただし、彼女が因果律を越えて存在している以上、消滅したはずの情報が再生される確率はゼロだと断定は できない」 「分かった」 彼は納得顔で頷き、朝比奈さんと古泉君も頷く。でも、私には理解できない。これが二年間の人生経験の差なのか、単に私の 記憶がないことが理由なのかは分からないけど。私の表情を見て取ったのか彼は私の頭をぽんぽんと軽く叩いた。 「佐々木よ、ぶっちゃけた話、お前が今ここにいる理由は宇宙的知性にも分からないんだとよ。それと記憶が戻る可能性は 限りなく小さいかもしれないが、ある日突然戻るかもしれないってことだ。つまりはそれも分からんということだ」 やっと理解できた。私がいてはいけない理由はない。過去はともかく、これからの人生だけを考えて生きていけばいいという ことだ。今までの記憶はないが、これからいっぱい記憶すればいい。彼と一緒に……だったらいいのだけど。 彼に頭を撫でられている私を長門さんがじっと見ているのに気付く。無表情だが、どこか悲しげなように見えるのは何故 なんだろうか。もしかして長門さんも彼のことを好きだったりするのだろうか。朝倉さんが言っていたように、彼は宇宙人の 長門さん、どうみても人間としてのコミュニケーション能力が高いとは思えない彼女にもごく普通に接していたに違いない。 朝倉さんの上司ということは、きっと朝倉さんよりも凄いことができるのだろう。そんな人、まあ人ではないけど宇宙人と いうからには人の範疇か。とにかく、きっと彼のことを長門さんは好きなんだろう。彼と長門さんとの言葉のやり取りは全然 気兼ねのない感じだし。 「長門、まだ話すことがあるだろう?」 不意に彼が長門さんに言った。どうして分かるんだろう。一見無表情な長門さんだが、彼はその僅かな変化を見て取れるの かもしれない。 「……以上は情報統合思念体の公式見解。以下はわたしの個人的な見解」 やっぱりそうだった。私は何となく不安になる。どうしてか分からないけど、彼が他の女の人と心が通じ合っているのを 見ると凄く不安だ。朝倉さん然り、長門さん然り、多分朝比奈さんも然りだ。私達よりずっと年上に見える朝比奈さんが どうして彼と心が通じているんだろうか。あ、きっと今の時代にいるもう一人の朝比奈さん、彼の一学年先輩ということに なっている朝比奈さんと親しかったのか。 私が妄想を巡らしている間に、長門さんは話を始めていた。 「……当時のログが大量に消失しているために情報伝達に齟齬が生じるかもしれないので注意して欲しい。また、内容に 矛盾があれば指摘して欲しい。佐々木沙貴、あなたには辛い話かもしれない。でも聞いて」 私を含め、皆が頷くのを待って長門さんは本題に入った。 「……二年前のイベント、天蓋領域の消滅に関する一連のログをわたしは独自に調査した。このことは情報統合思念体に 報告しているが、確証が取れないため事実認定は保留されている。 ……二年前の春、ログが消失しているので理由は不明だが、天蓋領域の干渉と涼宮ハルヒの改変によりこの世界は分裂の 危機に陥った。しかし、現在は不明な経緯と手段により再統合が行われた。これに関して、涼宮ハルヒ以外の氏名不祥な 世界改変能力者の関与が推測されるログが残っている。恐らくは佐々木沙貴、あなた。 ……その後、天蓋領域は情報統合思念体との共存を何らかの理由で拒否し、両者は対立状態となった。彼が言うところの パーソナルネーム周防九曜というインターフェースが地球上での干渉を担当していたと思われる節がある。また、彼が 涼宮ハルヒではない氏名不詳の女性と懇意にしていたと思われる形跡がある。それも佐々木沙貴と推測される。 情報統合思念体はこの状況を奇貨として天蓋領域の消滅を計画した。涼宮ハルヒが大きな情報フレアと共に閉鎖空間を 発生させるタイミングで、その情報を天蓋領域と対消滅させるという内容。詳細はログの消失で不明だが、涼宮ハルヒに ストレスを与えるイベントが発生し、情報フレアが起きたタイミングで情報統合思念体は計画通り天蓋領域の消滅を実行 した。これ自体は問題なく実行され、天蓋領域は完全に消滅した。ただし、同時に世界改変が行われ、大量の情報が これに巻き込まれて同時に消滅、情報統合思念体の未来に対する同期機能は破壊され、ロギングシステムにも重大な 障害が発生した。 ログがない状態ではフォールバックが不可能なため情報統合思念体は喜緑江美里らに命じて不整合な情報を切り捨てる ことで世界の崩壊を阻止しなければならなかった。 閉鎖空間に取り込まれていた彼の回収は、涼宮ハルヒの力をうまく使って行われた。『機関』が認識していたのは彼が 涼宮ハルヒが作った通常と異なる侵入困難な閉鎖空間から無事に戻ったことのみ。古泉一樹、それは間違いない?」 古泉さんは目を細めて記憶を浚っているようだ。 「はい……記憶にある限りですが、我々の認識ではそうでした」 「俺もそう言われたぞ」 彼が古泉さんの回答を裏打ちする。長門さんは僅かに頭を動かしてから続けた。 「……ここからはわたしの推測。閉鎖空間にはもう一人の人物が閉じ込められていた。涼宮ハルヒの嫉妬の対象である人物、 それは佐々木沙貴、あなたと思われる」 「いや、長門、それは俺的には事実だ。あの時、俺と佐々木は涼宮の閉鎖空間に閉じ込められていたんだ」 彼の表情が硬くなり、拳を握り締めたのが分かった。思い出したくないことを思い出しているかのようだ。 「佐々木は俺の目の前で消え、俺はこちらの世界に戻された。お前の推測は実際にあったことと一致している」 「……そう」 「俺はそのことを言わなかったか?」 「……あなたは言っていない。あなたがわたしに質問したのは佐々木という名前だけ」 「そうだったか、くそっ」 彼は吐き捨てるように悪態をつく。長門さんの言葉を疑わないのはどうしてだろうと思ったが、恐らく宇宙人の長門さんは 事実を正確に記録しているからだろうと見当をつけた。それよりも恐ろしいことがある。私は消えたんだ。彼の目の前で。 自分が彼の立場だったらどんな気持ちだろう。想像するだけで身震いしてしまいそうだ。彼がどんな思いをしたかが、やっと 判ったような気がする。 「……推測部分が解決したので、これ以降は事実である可能性が高い。閉鎖空間と共に消滅する直前に、佐々木沙貴は世界 改変を実行した。理由は言うまでもなく自己保全のため。そして、朝倉涼子や朝比奈みくるの推測どおり、自らの 構成情報のみを辛うじて時間平面を越えて移動させた。そして追跡を避けるために情報統合思念体の同期機能を停止させた。 この時に大きな時空震動が発生した。朝比奈みくる、あなたが未来で観測したものが恐らくそれ」 「はい、長門さんのおっしゃるとおりだと思います」 朝比奈さんが頷くと、長い髪と胸が揺れた。そちらへ彼の視線が向いているのを見て私は彼の脇腹をつつく。彼が私の方へ 向き直ったので、頬を膨らませて見せると彼はバツの悪そうな顔になった。全く、どうして男はこういうのに弱いんだろう。 「……時空震動のみしか観測できなかったのは、先に述べたとおり大量の情報が改変に巻き込まれて消失していたためと 思われる。また、佐々木沙貴の記憶が消えているのもそのせいと推測される。 ……わたしの個人的な推測は以上。完全に事実と検証されたわけではないが、彼の証言でほぼ間違いない事実と認定可能」 そこで長門さんは沈黙した。朝比奈さんも古泉さんも彼も黙り重苦しい空気になる。何か言わなくてはと思うけど、言葉が 浮かばない。この件については私は空っぽなのだ。 沈黙を破ったのは古泉さんだった。恐らくそういうキャラクターなのだろう。 「すみませんでした。知らなかったとはいえ、僕はあなたにずいぶんとひどいことを言っていたはずです」 古泉さんが頭を下げる。 「私もそうです。無神経なことを言ってしまいました。ごめんなさい、キョン君」 朝比奈さんも申し訳無さそうな顔で頭を下げた。 「いや、それはもういいんだ」 彼はすぐに応えた。 「朝比奈さん、古泉、頭を上げてくれ。あの時の二人の対応は仕方がなかったと理解できた。俺に謝る必要はないんだ。 謝るのは俺の方だ。みんなにひどいことを言った。すまん。それに、あいつにもひどいことを言った」 「ですが……」 「くどいぞ古泉。もういいんだよ。涼宮……いやハルヒのことも、俺はもう恨まなくていいんだ。」 そこで彼は一呼吸置いて、傍らの私を抱き寄せた。私はされるがままに彼の腕の中に納まる。そして、見上げた彼の横顔には 初めて見る笑みが浮かんでいた。 「だって、佐々木はここにいるんだからな」 何だろう、この幸せな気分は。彼の一言は愛を語る言葉でも何でもないのに、どうしてこんなに幸せな気分にさせてくれるの だろう。記憶がないはずの私なのに、まるで何年も恋人同士だったかのように、彼を信じ、彼に愛されたいと思うのだろう。 「あの……キョン?」 私は初めて、彼の渾名を呼び捨てにしていた。 「やっとそう呼んでくれたな」 「うん……私は年下だけど、これからもそう呼んでいい?」 「良いに決まってるだろ。むしろそれ以外の呼び方をするな」 「うん……」 「それとな、佐々木、できれば男言葉で話してくれ」 「え……それはちょっと難しいかも」 「そっか、いきなりは無理だな」 困ったようなキョンの顔を見ると、思わず笑みがこぼれてしまう。 「くっくっく、いきなりは無理よ」 キョンは一瞬驚いた顔になり、また優しい笑顔になった。 「やっと笑ってくれたな」 そうだっけ。そう言えば笑った記憶がない。私はこんな風に笑うなんて知らなかったな。 古泉さんの咳払いで私は我に返る。キョンもしまったという顔をしていた。 「すみません、仲が良いのは十分に理解できましたから、愛の語らいは僕らが退散した後でしていただけますか」 「ああ、すまんすまん」 キョンは照れ隠しに頭を掻く。火照っているのが分かるから、私の顔は真っ赤になっているに違いない。 朝倉さんと橘さんも呼ばれて、私達の今後についての話になった。朝比奈さんは元の時間に帰らないといけないので、 皆に見送られて一足先に姿を消す。再会の約束をしないのが未来人のスタイルらしい。 古泉さんがちゃぶ台を囲む一同を見回してから、キョンの方を向く。 「二年前にも同じ台詞を言ったかもしれませんが、我々『機関』はあなたに大きな借りがあります。言うまでもなく、涼宮 さんによる世界の崩壊の危機を防ぎ、改変からの復帰を実現していただいたことについてです。我々ができるのは社会 生活上の便宜、あるいは金銭的な支援だけですが、今度こそやらせていただきたいのです」 「まあ大したことをしたわけじゃないが、今度ばかりは貰える物は有難くいただくことにするさ」 「そう言っていただけると僕の気持ち的にも救われます。当面、佐々木さんの衣食住についてサポートさせてください。 具体的には、佐々木さんの個人情報の作成と登録、お二人で暮らせる住居の確保、生活費の支給、佐々木さんの高校への 編入と学費の援助の四点です」 キョンは真面目な顔で頷いた。 「そうしてもらえると有難いな。現状俺一人で佐々木を養うわけにもいかんからな。俺が就職するまで頼めると助かる」 「水臭いことを言わないでください。少なくとも佐々木さんが大学を卒業して就職されるまではやらせていただきますよ」 「分かった。よろしく頼む」 今度はキョンが頭を下げた。それはいいが、ちょっと待って欲しい。私はキョンと暮らすことになるの? いや、別に嫌だと いうわけじゃないけれども……誰もそんなことは気にしていなかった。これは既定事項なんだろうか。 「ねえ、長門さん、個人情報の登録なら私達でもできるんじゃないの?」 「……朝倉涼子、わたし達がインターフェースを潜り込ませるのとは異なる。ここは『機関』に任せるべき」 「あ、そうか。正しい戸籍を作るのはわたし達には無理よね」 朝倉さんは納得顔で引き下がると思いきや、今度は別の提案をしてきた。 「ねえ、二人とも良かったらこのマンションに住まない? 古泉君、『機関』でこのマンションの部屋を借り上げられないかしら?」 「空き部屋があれば大丈夫だと思いますが、橘さん分かりますか?」 「少々お待ちを」 橘さんはさっきから持参したノートパソコンを開いていたが、素早くキー入力をする。 「はい、大丈夫です。朝倉さんの監視用に借り上げている部屋が使えますね」 「やだ、まさかわたしの着替えを覗いたりしてないでしょうね?」 朝倉さんがおどけて言う。古泉さんは笑顔のまま応じた。 「ご安心下さい。監視要員は女性ですから」 やっぱり見ているんだろうか。もしかして、私も見られていたということ? それはともかく何気に凄いやり取りのような 気がするのは私だけだろうか。いや、キョンも苦笑している。 それから事務的な話がいくつかあり、夜も遅くなったので長門さん、古泉さん、橘さんは帰ることになった。橘さんは同じ 私鉄沿線なのですぐ帰れるが、長門さんと古泉さんはこれから迎えの車で京都まで帰るそうだ。 「涼宮さんの我慢の限度は一晩でしょうからね。鶴屋さんもお忙しいのであまり長時間の滞在は申し訳ないですし」 「ああ、みんなによろしく言っておいてくれ。近いうちに一度そちらへ帰るつもりだ」 「お待ちしています。涼宮さんにも是非会ってあげてください」 「俺はハルヒに謝りたい。例え話とはいえ人殺し呼ばわりしてしまったんだ。いや、どの面下げて顔を出せるんだ」 「大丈夫ですよ。涼宮さんも変わりました。是非会ってあげてください」 「佐々木を連れて行っても大丈夫か?」 「はい、むしろその方がよろしいです」 キョンは古泉さんの答えに異論を挟まなかった。どうしてその方がいいのか私には分からないが、二人には理由が分かって いるのだろう。 その夜は朝倉さんと寝た。 朝倉さんのベッドは贅沢にもセミダブルなので、女子二人が寝ても余裕だ。何か目的があってこのサイズにしたのかも しれないが、武士の情けで訊かないでおこう。 「今日、みんなには聞こえないように長門さんにお願いしたのよ」 毛布に包まって目だけ出している朝倉さんが唐突に言う。 「できればわたしの有機情報連結を解除して欲しいって」 「何ですかそれ」 「有機情報連結、つまり人間としての姿を消して欲しいってお願いしたの」 「どうしてそんなことを?」 「これ以上キョン君とあなたが仲良くしているのを見続けるのが辛いから。佐々木さん、さっき自然にキョン君の腕の中に 納まってたでしょ? あれを見て、ああこれは勝負にならないわって思ったのよ」 「……」 私は顔が火照るのを感じた。二年の時を越え、私の記憶も無いのに、自然に演じてしまった公開ラブラブショー。 お恥ずかしい限りだ。どぎまぎしている私を見て、朝倉さんはうふふと笑った。 「だけど長門さんに却下されちゃったのよ。わたしの処分は最低四年間キョン君の傍にいることなの。つまり、刑期はまだ 三年半以上も残っているわけ。一昨日までの状態だったらわたしは全然処罰されているという感覚は無かったんだけど、 あなたが現れてから実感できるようになったわ」 「ごめんなさいって言うのも変ですよね」 「うふふ、そうね。それでね、長門さんの回答は『彼と離れ離れになっているわたしの方が辛いことを理解すべき。 どうしてもというなら涼宮ハルヒの担当にする』っていうの。正直涼宮さんは苦手だから、今のままにしてもらったわ。 長門さんはむしろ交替して欲しかったみたいだけどね」 「長門さんもキョンのことを好きなんですか?」 「ええ、好きなんてレベルじゃないわね。世界改変してしまうくらいにキョン君のこと愛してるの。でも、涼宮さんの手前、 それをキョン君にあからさまに伝えることも、行動で示すこともできなかったのよ。だからその辛さを長門さんは良く 知っているの。多分、朝比奈さんも同じよ」 朝比奈さんはともかく、長門さんや朝倉さんのような人間を遥かに超えたレベルの宇宙人が、何で人間に恋するんだろう。 女性として作られたために生じた感情のなせる業なんだろうか。私はどうしてキョンに恋したんだろう。記憶が戻れば 分かるのだろうけど、涼宮さんが私を消したくなるくらい、キョンと私の心が通じていたのなら嬉しい。 「私には無謀だけだと勇気があったんでしょうか」 「多分ね。それに宇宙人とか未来人のように背負っている任務が無かったからだと思うわ。 ま、それはともかくとして、わたしは少なくともキョン君が大学を卒業するまではあなた達の近くにいることになった わけね。くやしいからいっぱいお世話させてもらうわよ」 「はい、こちらこそよろしく。キョンに悪い虫がつかないようにお願いします。ふわ……」 朝倉さんは毛布から顔を出す。口元には楽しそうな笑みが浮かんでいた。 「それは大丈夫。二重の意味でわたしがさせないわ。この役得は長門さんにも……」 朝倉さんがその後何を言ったかは定かではない。私は、その後すぐに眠ってしまったから。 44-99「―佐々木さんの消滅―」 44-99「―佐々木さんの消滅―ep.00 プロローグ」 44-101「―佐々木さんの消滅―ep.01 消失」 44-120「―佐々木さんの消滅―ep.02 訣別」 44-134「―佐々木さんの消滅―ep.03 二年前の少女」 44-157「―佐々木さんの消滅―ep.04 彼女の想い」 44-182「―佐々木さんの消滅―ep.05 特異点」 44-235「―佐々木さんの消滅―ep.06 二人だけの記憶」 .
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/2993.html
The melancholy of Cupid 新入生もそろそろ初々しさを失い、彼らもまあ人生こんなもんかという高校生的悟りを開いた頃、俺も高校生最後の一年間に足を踏み入れてそろそろ一ヶ月が経とうとしている。クラス編成はたぶん説明するまでもないだろうな。俺とハルヒはなぜかそのまま繰り上げ文系、古泉と長門は理系クラスへ進級した。単なる偶然かあるいは誰かの意図か四人とも同じ国立を志望していて、俺は模試が来るたびにハルヒの課外講習を受けているありさまだ。ハルヒに付き合ってまで進学校を選ぶなんて、俺も自主性がないのか人がよすぎるのか、どっちでも同じだが。最後には神頼み的ハルヒの力でなんとか試験合格させてもらえないかなどと、甘いことを考えている自分を恥じていたりもする。 SOS団はなんの変わり映えもしない、はっきり言えばマンネリ化だな。昔に流行ったタイトルをリメイク、リキャストして出しなおす英雄モノの映画みたいに、去年のイベントに手を変え品を変え再利用しているのが、今日この頃のハルヒだ。さすがのお前もそろそろネタ切れか、ハルヒ。 俺はといえばあの事件以来、たまにだが、長門を誘うようになった。 たとえば日曜の朝、本を買いにでかけようと玄関で靴を履きながら、ひとりで行くより誰かを連れて行きたいなと考える。妹を連れて行った日にゃおもちゃやらケーキやらの前でじっと動かないし、卒業してから会っていない朝比奈さんを誘えたらいいんだが誘うとまたハルヒの不機嫌の虫が暴れだすだろうし、古泉?この世界が閉鎖空間になっちまってもあいつとだけはデートはしたくない。じゃあハルヒか、あいつは持てる全エネルギーでぶつかってくるんで気が休まらん。 こんな感じで、消去法でいくと長門しかいないわけだ。別に付き合うとか、長門を恋愛の対象として見てたわけじゃない。言い訳じみて聞こえるかもしれないが、俺が出かけるついでに長門も連れて行ってやろうかとふと思うことがたびたびあっただけだ。 休みの日に長門をひとりにしておくべきでないような、なんとなくそんな気になる。殺風景な部屋でじっとしている長門を想像すると、心のどこかにモヤモヤしたものが生まれてしまう。部屋の白い壁と同化してそのまま消え入ってしまいそうな気さえする。 休日の朝、電話をかけると長門もとくに用事もないようでいそいそとついてきた。図書館に行って長門が気の済むまで借りる本を品定めしたあと、たまにだが映画に行ったり、ごくごくたまにだが飯を食いに行ったり、まれに地元のイベントに行ったりしていた。無論、俺が誘うのだから俺のおごりだ。そういう日には不思議と財布の中身にも余裕があった。 一度ゲーセンに行ったときには、長門がファイター系のゲームをはじめてしまって止まらなかったことがあった。 無駄のない動き、炸裂するコンボ技、目にもとまらないコントローラの操作。むかし炎のコマとかあったっけ。ギャラリが集まってきてオオッとかスゲーとか、セーラー服のきゃしゃな女の子がやってるもんだから、やたら歓声が上がったりしていた。 俺はゲーマーの群れから離れて、ひとり缶コーヒーを何本か飲みながら暇を持て余していた。手持ち無沙汰にUFOキャッチャーで取ったぬいぐるみをいじっていた。 二時間くらいしてやっと終わり、長門の妙に達成感に充たされた表情を見て俺は笑った。グッジョブ。おつかれさま。 それから光陽園駅まで戻り、そこで別れる。そんなことを何度か繰り返していた。 「じゃ、またな」 「……」 俺も別れを惜しんだりしないし、長門もいつまでも手を振っていたりはしない。たまに、俺が千二百円くらいかけてやっとゲットしたヌイグルミを大事そうに抱えている以外は。 二人とも極めてドライだった。他人が見れば、兄と妹だと思っても違和感はないくらいにカラリとした付き合いだった。俺はこんな、お互いになんの気兼ねもない関係が続けばいいと思っていたんだ。 ところがそうは思わなかったやつがいた。涼宮ハルヒである。 「キョン、谷口に聞いたんだけど、あんた有希と付き合ってんの?」 俺は飲んでいたお茶を噴いた。長門が読んでいた本から顔を上げた。目を丸くしている。 「な、なにを根拠にそんなでっち上げを!?」 だが予想はしていたことかもしれない。なにもやましいことはないはずなのに、俺は妙にうろたえた。 「あんたと有希が駅前を歩いてるのを何度か見たらしいんだけどね」 「でっち上げだ!濡れ衣だ!冤罪にもほどがある、弁護士を要求する」 「なにムキになってんの。なんでもないならいいじゃないの」 「……わたしたちに特別な関係はない」長門は本に視線を戻してボソボソと言った。 「まあ、キョンが誰と付き合おうが自由だけどね」 ハルヒが横目にお茶をすすりながら言った。内心ほっとした。というかまわりから見れば、俺と長門の関係は微妙で曖昧かもしれんな。 話はそれだけでは終わらない。 翌日俺が部室のドアを開けるなり、ハルヒが叫んだ。 「キョン、有希。ちょっとあんたたち、マジで付き合ってるんじゃないの?」 唐突にハルヒが言った。長門と俺は目を見合わせた。 「なんなのよ、その目と目で暗黙の示し合いは」 ハルヒのイライラ度指数が急上昇してきた。まずい。 「昨日あんたが有希のマンションに入るのを見たのよ!」 うわ……まじか。俺は自宅前で絶世の美女といるところをフォーカスされた有名人のようにうろたえた。 「付き合ってるというわけでもなくてな。いやまあ、ときどき一緒に図書館に行ってる程度なんだが……」 「一人暮らしの女の部屋に上がりこむのはね、世間では付き合ってるって言うのよ」 「お前にとやかく言われる筋合いのことじゃないと思うが」 「あたしが言ってるのはね、あたしに嘘をついてまで付き合ってるのが気に入らないってことよ!」 俺には取り付く島がなかった。 「SOS団は、あたしはいったい何なの、ただの同級生?見せかけの信頼関係だったの?」 「たまにいっしょに出かけるくらいで、お前が考えてるような関係じゃないんだけどな」 「じゃあなんで嘘をついたのよ」 「いやなんというかな、ハルヒ、俺は別に悪気があったわけじゃ……」 どうにもごまかしようのない事態になってきた。古泉に助け舟を求める視線を投げてみるが、この野郎、笑ってやがる。 「有希も黙ってないでなんとか言いなさいよ。あんただけは信用してたのに」 「……わたしは間違ったことはしていないし、言ってもいない」 長門は本から目を離さず、抑揚のない声で言った。それがハルヒの逆鱗に触れたようだ。ハルヒは机をげんこつでドンと叩いた。湯飲みが震えてお茶がこぼれた。 「有希、あんたここから出て行って」 「……」 長門はじっとハルヒを見つめた。それから本棚から本を数冊抜き取って脇に抱え、何も言わずに出て行った。ハルヒのこめかみに青筋が立っている。 「ハルヒ、言い過ぎだぞ。長門は元々文芸部の人間だろうが」 「なによ、事実上SOS団のメンバーじゃないの。あたしは団長よ。上司の言うことは絶対なのよ」 「お前、もうちょっと大人かと思ってたが全然ガキじゃないか」 「あたしに向かって嘘をつく団員なんかクビよ!」 「長門は嘘はついてないだろうが!」 「もう、その辺で」古泉が割って入った。 「気分悪いわ。今日は帰る」 ハルヒはカバンをひっつかんでドタドタと出て行った。ガラスが割れそうな勢いでドアを閉めた。壁の粉がパラパラと落ちた。 「お気持ちは分かりますが、ここは暴走させない方向でお願いします」 古泉がすがるように俺を見る。 「んなこた言われなくても分かってるさ。だがいったいいつになったらハルヒは大人になるんだ」 「待つしかありません。しかし今回の件はあなたに責任がある」 「俺が誰と付き合おうとあいつの許可はいらん」 っていうか、付き合ってるわけじゃないのに俺。 「ですが、嘘は涼宮さんを怒らせる要因にはなります。それに……」 「それに何だ」 「嫉妬だとは考えられませんか」 「ハルヒが嫉妬?」 「前にあなたが涼宮さんもろとも閉鎖空間に行ってしまったときのことを、よもやお忘れではないでしょう」 思い出したくもない……あれは悪夢だ。 「あれは涼宮さんが望んだからそうなった。その要因を作ったのはあなたと朝比奈さんだった」 「まったく……。ハルヒは俺のタイプじゃない」 「なにも恋愛しろと言っているわけではないんです」 いまいましいことに俺は古泉に説教されている。 「あなたの言動は涼宮さんの精神状態に影響するんです」 「じゃあ俺は死ぬまでハルヒの子守りをしなきゃならんのか」 「そうです」 なんてこった。俺は頭を抱えた。 「ですが、徐々に環境を変えていくことはできます。たとえば将来、あなたが別の誰かと結婚することになっても、涼宮さんを暴走させないでいるだけの環境に」 「ハルヒは嫌いじゃない。だがときどき俺の手にあまることもあるんだ。俺自身の人生は俺が決めてもいいだろう?」 なぜか弱腰だ。 「もちろんです」 そのとき、誰かの携帯が鳴った。俺ではなく古泉のほうだった。 「どうやら涼宮さんのイライラが限界に達したようです。バイトに行かなくてはなりません」 「そうか。すまんな」なんで俺が謝るんだ。 「できれば僕がとりなしておきますよ。明日また会いましょう」 しかしまあ、恋愛のレの字もないのに恋愛沙汰とは。俺もヤキが回った。 その日は結局、長門は戻って来ず、ハルヒにも会わなかった。長門は嘘をついたわけではないが、ハルヒに正確なところを伝えていない。それも要因のひとつだ。俺は嘘でお茶を濁そうとした。……なんてこった、俺が悪いのか。ハルヒがわがまま過ぎるのは論外だが。 次の日、俺はなんとかハルヒと和解しようと試みたんだが、ずっと無視されっぱなしで立つ瀬がなかった。ハルヒをなだめたりすかしたりするなんて、俺もうこんな人生いやだ。 その日、ハルヒはとうとう部室に来なかった。当然、長門もだ。 「僕にも立つ瀬がありません」 古泉の和解工作も失敗したらしい。 ── 聞いた話になる。 「涼宮さん、僕たちが出会ってからもう二年が経つんですね」 「なにが言いたいの。愛の告白なら間に合ってるわ」 「そうではありません。僕たち、というのはSOS団のメンバーのことです」 「それがどうかしたの」 「今までいろんなことがありましたね。宇宙艦隊を指揮して獅子奮迅の戦いをしたり、雪山で遭難しそうになって助け合ったり、SOS団の存亡かけて生徒会と戦ったり」 「だから?」 「僕たちはかつてないほどの最高のチームだとは思いませんか」 「まあ、それは認めるわ」 「こんなつまらないことで仲たがいするのはやめましょうよ」 「つまらないこととはなによ。あたしは本気で怒ってるんだから」 「長門さんも悪気はなかったんだと思いますよ」 「あたしは有希のことを言ってるんじゃないの。キョンがあたしに隠れてこそこそしてるのが気に入らないの」 「つまり……どうしろと」 「付き合うのか付き合わないのか、はっきりしなさいってことよ」 「でもあの二人ですから。そう簡単には白黒がつくとは思えないですが」 「古泉君、あんたどっちの味方なの」 「えっ……。もちろん僕は涼宮さんの味方です」 「よろしい」 「、ということなんですよ」 「ということじゃないよ、全然フォローになってないじゃないかよ」 「面目ありません」 ハルヒの腰巾着め。 「あなたは涼宮さんに第一の信頼を置かれている人です。そのあなたが涼宮さんに悟られないように行動しているのが、彼女には気に入らないのでしょう」 「俺は隠れてるわけじゃないんだがな」 「本当にそうと言い切れますか?長門さんを誘うとき、涼宮さんに遭遇しないよう配慮したりしませんか」 ズバリ言われて、ぐうの音も出ない。 「ここはひとつ、オープンに行きませんか」 「どういうことだ」 「二人の状況を正直に話すんです。分からないことは分からないでもいい。どういうきっかけで一緒に出かけるようになったんだとか」 「まあその程度なら。でも、なんでも教える必要があるのか」 「それはもちろん、」古泉はひと呼吸置いた。「あなたがたを引き合わせたのは涼宮さんですから」 休み時間に携帯が鳴った。 「もしもし、キョン君?喜緑です」ひさしぶりに聞く声だ。 「これはどうも、おひさしぶりです」 俺はハルヒに聞こえないようにと教室を出た。喜緑さんにはいろいろと影になり日向になりお世話になっていて、困ったときの救いの女神だ。 「あの……長門さんのことでちょっと話したいんですけど、今日は忙しいですか?」 「いえいえ、俺はいつでも暇ですよ」 ここんとこSOS団の活動は停止している。 「じゃあ、学校が引けたら光陽園駅前で会ってもらえます?」 「いいですよ。六限が終えたら電話入れます」 長門とハルヒの仲裁に来たのだろうか。今日、ハルヒはとうとう口を利かなかった。俺もムキになって無視し続けた。子供っぽいにもほどがある。 ホームルーム後、俺は古泉に電話して今日は休むと伝えた。 「長門のことで喜緑さんに呼び出された」 「ああ、そういうことですか。行ってらっしゃい。涼宮さんには伝えておきます。それはそうと、昨日の神人狩りはすごかったですよ。見せたかったです」 あんまり見物したくなるようなシロモノじゃないんだが。 「おひさしぶりです。先日はいろいろとありがとうございました」 ついこないだ会ったばかりなのに、なんだかずいぶん昔のことのような気がした。 喜緑さんは卒業後、たぶんハルヒの志望校と同じなんだろうけど、大学生になり、見た目もずいぶん大人っぽくなった。セーラー服じゃないからかもしれないが、なんだか妙にお姉さんっぽい雰囲気に包まれていた。 喫茶店に入ると、喜緑さんは本題を切り出した。いつものように前置きがない。 「長門さんがあんまり強情なので、情報統合思念体が解任しようかと動いてるんです」 「そんな。長門はよくやっていますよ」 「いつだったか異時間同位体とのリンクを拒んだ理由、覚えてます?」 「ええ。長門自ら、“自分がいやだから”とか言ってましたっけ」 「あの頃から長門さんは、なんというか今の、現時点の自分の個を主張する傾向にあって」 「もともと主張がなさすぎたから、ふつーになったんじゃありませんか。朝倉みたいに主張が強すぎるのも問題ですが」 「ええ。それは分かるんです。でも任務に支障をきたすようになってきたんで、上のほうでも懸念してまして」 「今回のことは俺が悪いんです。なんというかこう、人間には曖昧な部分がたくさんあって、たまに関係がこじれるんです」 「分かりますわ。私が来たのはただ、長門さんに任務を遂行するよう伝えるためなんです」 「喜緑さん、思念体の言いたいことは分かります。でもあんまり長門を叱らないでやってください。悪いのは俺とハルヒなんです」 喜緑さんはにっこりと微笑んだ。 「キョン君は優しいんですね」 「長門と知り合ってからいろいろあって、一緒に危機を乗り越えたり、異世界に行ったり、泣いたり笑ったりがあって。今では俺と長門の間には特別な信頼みたいなものがあるんです。そこにハルヒが子供みたいに嫉妬して、こういう状態になってしまったわけで。なにをされても怒ることすらなかった長門に、今は守りたいものがあるんです」 長門のことになるとなんでこんなに饒舌になるのか、自分でもよく分からないんだが。 功を奏したのか、喜緑さんは少し考え込んだふうだった。 「そうなのですね……分かりましたわ。それにしても、長門さんもずいぶん人間っぽくなりましたね」 「ええ。みんなが思うよりずっと人間臭いと思います」 「たぶん、あなたのその感性が彼女を変えたんだと思いますよ」 「え……」 言葉にならなかった。 「有希のマンションでなにしてたのよ」 翌日の四限の終わりに、弁当を持って外に出ようとしたところ、ハルヒが唐突に切り出した。 「あんた、有希のマンションでなにしてたのよ」 「なんというかな。いつだったか話したろ、長門が親類のところに引っ越すとかどうとか」 「あれとどう関係があるのよ」 「いや、あれからときどき身の上相談に乗ってやっててだな」 「それで付き合うようになったわけ?」 「いや、だから一般に言うような男と女の付き合いじゃないんだって」 「じゃあなんで隠してたのよ。やましいことがあるからでしょ」 「隠してたわけじゃなくて、誤解されそうだったからあえて誰にも言わなかったというか。谷口はアレだし」 「隠したってもう周知の事実よ」 それはまあ、人の噂も八十日というから気にはしてないんだが。 「あたしは隠れてコソコソされるのが嫌いなの」 「ああ、分かってるよ。悪かった」 「謝ってるのそれ」 「そうだ」 「まあ、いいわ。最初からそう説明してくれれば……」 言い淀んだハルヒは、なにごとか考えているようだった。 「あんた、有希とまじめに付き合うとか考えないの?」 「うーん……」 俺は少し考え込んだ。俺にとって長門って何なんだろう。同級生、部活のメンバー、頼れる宇宙人、でもときどき守ってやらないといけない宇宙人、ほかにもなんだかあるが。 「分からん。そうなるのかもしれないし、ならないのかもしれない」 しかしながらハルヒの次の一言は、正直こたえた。 「キョン、有希を泣かせたらあたしがタダじゃおかないからね」 Someday over the rainbowへ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/2480.html
「生徒会長が重傷!?」 僕は臨時教師としてやってきた新川さんの言葉に驚いて大声を出した。 はっとして自分の口を塞ぐが手遅れ。まだ世間へは公式発表のなされてない事なのであんまり大声だとまずい。 爆発事故の現場として周辺の廊下含めて封鎖されている生徒会室内なので多少は外に漏れても大丈夫だろうが。 「いきなりの事で驚くだろう。そりゃ、仕方ない」 「申し訳ございません。私が居ながら」 ぺこりと深く頭を下げる喜緑さん。そんな事はどうでも良い。 僕はぽかんとしている。それは自分で理解している。 だが、その情け無い表情から元のスマイルに戻せるほど今は落ち着いていられない。 あの生徒会の重傷。襲撃してきたのは朝倉涼子。 そしてその目的は僕の命だという。 「怖い、ですか?」 喜緑さんが僕の顔を覗きこんで尋ねてくる。えぇ、と頷く。 「大丈夫ですよ。私と長門さんで貴方を守護しますから」 「・・・そうじゃないんですよ」 「?」 「それよりも、彼女が心配なんです」 「神人さん・・・ですか?」 「はい」 僕の不安はやはり彼女だ。 人間とは違う神人。そんな彼女が死んだらどうなるか。 それ以前に、死なせるわけにはいかない。僕の大切な人だから。 でも相手はインターフェース。所詮、閉鎖空間の外での僕では到底敵わない。 だから彼女を巻き込ませるわけにはいかない。 でも、もし巻き込まれたとしたら。その時は? 不安が渦を巻いている。巻いて、巻いて、いつまでも巻いていた。 「大丈夫だ、古泉」 新川さんはそう言って僕の肩をとんとんと叩いた。 「いざという時には機関総動員でお守りしてやるさ」 「私もいますから平気です。あと、長門さんはもちろんですね」 「お二人ともありがとうございます」 新川さんと喜緑さんはにっこりと笑う。 多くの人に支えられてここに居る。当然の事だけど、それを再び重々理解した。 ふと生徒会室の扉が開いた。そして見慣れた陰が入ってくる。 「帰りのホームルーム終わりましたか、神人さん?」 「うん」 時刻は昼頃。本当は終わるような時間じゃない。 生徒会室が攻撃されたから捜査という事で職員も早帰りなのだ。 もちろん、捜査するのは我々機関である。 「じゃあ、帰りましょうか」 「うん!」 「では、失礼します」 僕たちは手を繋いでややこげた生徒会室から出た。 多少なり恐怖はあるけれども、神人さんが横に入れば大丈夫な気がした。 それに今は新川さん達や喜緑さん達も支えてくれた。だから、大丈夫。 そんな油断をしていたからだろうか。 隣に居る神人さんがキョロキョロと不安そうな顔で回りを見渡すのを見て知った。 突如として変わった空気に気付くのに恐らく数秒掛かってるだろう。 僕は自分の失態に腹が立った。奇襲を考えなかったわけでもあるまい。 このタイミングで来たその脅威にやや頭が混乱していると解る。 だけど、自分で処理が出来ない。 どこまでも続く長い、長い廊下。次元を捻じ曲げたかのように長い。 それは果てが見えない。果てが見えないが故に闇がある。 右も、左も解らない。窓があるべき側にも教室が並ぶ。 左右鏡になっていた。その廊下の向こう側に少女が一人立っている。 「朝倉涼子さん・・・ですね?」 「えぇ。はじめまして、だよね。古泉くん」 微笑むその少女から放たれる殺気という名前の無邪気。 純粋に殺す事を楽しんでいるような雰囲気。まさに快楽殺人者の域。 彼が出会った少女は間違いなくインターフェースだった。感情の無いが故の快楽殺人者だ。 神人さんを連れて逃げられるか。自信は無い。 ふと危険を感じて僕は近場の教室の扉を開けて神人さんを抱えて飛び込んだ。 「きゃっ!」 「少々乱暴ですいません、神人さん」 振り返ると廊下を何かが突き抜けていくのが見えた。 間違いなく当たれば死ぬ。 僕は恐怖を覚えながらも迎撃の準備に移った。 右手に赤い弾―――と言ってもとても小さいが―――を発生させた。 インターフェースが作り出す空間は構造上閉鎖空間にやや似ているところがある。 故に小規模ながら発生させる事が出来るんです。 僕は教室の前側の扉が開いたと同時にそれを放った。 「ふぅんもぉぉぉっふっっっ!!」 朝倉さんはその攻撃に目をやや見開いて回避しようとした。 だが、避けきれずぐしゅっという湿っぽい音と共に朝倉さんの右手が拭き飛んだ。 この程度の傷はインターフェースにとっては苦でもないだろうが、片手を再起不能にすれば多少は悪足掻きになるだろう 「なかなかやるわね」 にっこりと笑いながら朝倉さんは言う。 「死ぬわけにはいきませんからね」 「じゃあ、これならどう?」 そう言ってこっちに手を翳す。刹那、多量の刃物が飛んできた。 「負けません!!」 僕も左右両手を前方に翳す。 「ふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんもっふ!!」 小さな赤い弾を何発を連射してそれを次々と叩き落す。 「頑張るわね。だけど・・・これで最後よ」 朝倉さんの手に光る何かが生えていた。 それは棒のようでもあり、羽毛の無い羽根のようにも見える。そして、悪の塊のようにも。 「ちなみに長門さんを易々貫通させれた代物だから、あっという間にあの世にいけるからね」 にっこりと笑いながら嫌な事を言う。 「じゃあ、死んで」 ふと、次の瞬間、空間に罅が入り、そこから無数の水晶が突き出てきた。 水晶はバリンと割れて粉々に砕け散り、小さな欠片一つ残さず消失した。 そして、 「進藤さん!?」 「ひーちゃん」 進藤さんがよいしょと罅割れの中から現れた。 「貴女が、対有機丸大豆コンタクト用ヒューマの井戸Inフェスティバル?」 いきなり思いっきり間違えてますね。 「大幅に間違えてるわよ、貴女」 インターフェースにまでつっこみさせるそれはある意味神の領域に突入してますね。 「長ったらしくて覚えられない。日本語難しいんだもん」 「そうなの。で、貴女は誰なのかな?」 「超能力者?」 なんで疑問文ですか。 「ふぅん・・・古泉一樹と一緒にわざわざわ殺されに来たの?」 「違う―――貴女を倒しに来た」 出資者・・・ではないが無理難題をおっしゃる。 「へぇ~倒せるのかな?超能力者にインターフェースが」 「うん」 うん、って。子供みたいに頷いたけど大丈夫なんでしょうか。 「じゃあ、殺してあげ―――」 「超能力者は閉鎖空間における神人退治の能力を持ってる人を一般に言う」 思いっきり朝倉さんの言葉を遮る進藤さん。 「いきなり何を言ってるの?」 「ただ、世の中には例外があるから、涼宮ハルヒの求めた事なのかは知らない。だけど、例外がある」 ちょっと日本語が気に掛かりますがこの際無視しましょう。 ツッコミいれられるような空気じゃないわけですからね。 「それが、私とお姉ちゃん。もっとも、私はお姉ちゃん程の異端ではないけど」 一体何を言ってるのか。そういう顔で朝倉さんは進藤さんの話を聞いている。 それはこちらも同じだ。超能力者の種類が一つではないという言葉の意味が解らない。 僕の知らない事を平然と語っている。 「お姉ちゃんは夢の海に生きる幻想。そして、私は現の地に立つ現実。それ故二つで、夢現」 そこで深い深呼吸をする。そして、進藤さんの姿が揺らいだ。 やがてすぅっと溶けるように姿を消す。 「私が統括するエリア内部で・・・!!」 朝倉さんが少し苦々しく呟く。そして辺りを見渡している。 ふと、突如天井から水晶が突き出た。朝倉さんはそれを回避する。 僕はただそれを見ていた。何が起きているのか解らない。 水晶が進藤さんがやっている事なら間違いなく僕が知っている超能力者ではない。 突き出た水晶はバリンと割れて跡形もなく消える。 今度は壁から水晶が突き出る、それを交わす朝倉さんの足元から水晶が浮上する。 ―――べちゃ。 赤い血が飛び散る。宙を舞うように朝倉さんの右足が転がる。 当の本人は何が起きたのか解らないという顔でそれを見ている。 そして、右足が違う方向から出てきた水晶によって千切られた事に気づいて、その表情の色をあからさまに変える。 水晶の先には赤い物がべっとりとくっ付いている。 その水晶から突如別の水晶が生える。 「あ ― ― ― 。」 スローモーションのように流れる景色、朝倉さんの反応が遅れたのが目に見えて解った。 そして、水晶が朝倉さんの顔の右半分を抉った。 眼球が眼窩から飛び出て神経を引きずりながら転がる。顔の筋肉組織、骨格、脳をさらけだす。 それでも朝倉さんは立っていた。だけど、流石にその表情に余裕は見えない。 「まだやる?」 ゆらりゆらりとしながら進藤さんがすぅっと現れる。 「いえ・・・ひとまず、退却しないといけないかな・・・・・」 朝倉さんは苦々しく顔半分削れた恐ろしい顔で苦々しく笑うとその場から姿を消した。 「・・・二人とも、早くこっちへ」 声がした方を向くと進藤さんが空間の罅割れから手招きをしていた。 僕達はその中に飛び込んだ。そして、スタッと生徒会室前に戻った。 そこには喜緑さんがすまなそうに立っていた。 「すいません。構成された空間に進入できなくて助けるのが遅れました」 「・・・いいえ。向こうだって一筋縄ではいかないようにしてますよ。仕方ないです」 「すいません」 「それよりもですね―――新川さん」 「・・・解ってる。進藤日和の事だな?」 「えぇ、教えていただきましょうか。この人がどんな超能力者なのか」 一難は去った。とりあえず、今は頭の中にある疑問を解消したい。そう思った。 だけど僕は、いや、誰も気付いていなかった。問題はまだある事に。 歪んでいく神人さんの変化に。 第六話「歪之國之少女(アリス)」へ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/4967.html
もくじ 「──こんにちは。─…あなたは──とても─優しい──…こんな──作品に……目を通して─くれている」 「…九曜さん、開始早々のメタ発言は避けてほしいのです」 「…まぁ九曜さんらしいと言えば九曜さんらしいと言うか」 「…おい、こんなくだらないことの為に時間を割くのはもったいだろ。さっさと本編を始めた方がいいんじゃないのか?」 「そうは言うがね藤原くん。どうやら僕達の出番はここしかないようなんだよ」 「少しくらいお喋りしたっていいじゃないですか」 「─…空気─読んで」 「…ふん…しかし与えられた役割があるだろ?せめてそれだけでもやったらどうなんだ?」 「それもそうだね。早い内に終わらせておこうか」 「この作品は、秋の企画にあわせて書かれたSSなのです。中には原作と少しずれた設定があるかもしれないのです」 「─メタ要素も──含まれる」 「そういうのが不快に感じる人は見るのはお勧めしないな」 「とりあえず僕たちが伝えたいことはこれくらいだ。あとは気楽に読んでほしいかな」 「…もう私たちの出番は終了ですか?せっかくの企画モノなのに」 「─…これ」 「ん?どうしたんですか?…って台本!?『橘用』って書いてあります!」 「おや、どうやら僕たちにも出番を作ってもらえたようだね」 「─…『九用』。──…『九曜用』の間違い?」 「って本編始まるじゃないですか!急ぎましょう!」 「そうしようか。長ったるい前書きで申し訳なかった。では」 「─…また──後で…会いましょう」 「…僕の台本が無いのは規定事項だ…」 朝っていうものは誰にも平等に訪れる。 もちろん過ごし方はそれぞれ人の好きにしてしまって構わないだろう。 それが休日ならばなおさらだ。 学校なんぞに縛られなくてすむ。 ちなみに今日は金曜日にも関わらずの休校日。 毎日ハルヒに振り回されて疲れきった体を癒やすために俺はベッドで爆睡している… …予定だったのに… 「キョンく―ん!朝だよ―!」 何が悲しくてその貴重な休みの朝っぱらから妹にたたき起こされなきゃいけないんだよ。 「…ちょっと待て…起きる前に少しつっこませろ…何で休日に早起きしなきゃいけないんだ?」 「え?キョンくんの学校って今日は運動会じゃないの?」 …運動会? 「そうだよ。去年は優勝できなくてハルにゃんが悔しそうにしてたじゃん!」 …去年? …俺の記憶が正しければ高校一年生の時に運動会なんて行事があった気がしないのだが… 「…そう…だっけか?」 「そうだよ。キョンくん寝ぼけてるの?」 「いや…まぁいい」 「早く支度しないと遅刻するよー!」 そう言って部屋を出て行く妹をふと見て即座に呼び止める。 「ちょっと待て!…その格好はなんだ?」 「え?何が?」 振り向いた妹は白装束に身を包んで、木製の杖のようなものを持っていた。 「だからお前の服装だよ」 「えー?今日はハロウィンだよ?毎年こうやって仮装してたでしょ?」 妹が言うには毎年10月31日には日本全国でハロウィン一色になり、どこもかしこも仮装した人で賑やかになるそうだ。 北高はその騒ぎに便乗して運動会を開くのだという。 …しかし今まで過ごしてきてそんなことは一度もなかった。 …なんとなく予想、ハルヒパワー大炸裂。 大方日本にハロウィンの風習が無いのを嘆いたのだろう。 …あと学校に運動会が無いのも。 …せっかく休めると思った日にとんでもなく愉快な行事がふたつ。 「…やれやれ」 とりあえず起きて学校に行くために俺の上で丸くなっているシャミセンをどかして朝食を食いにリビングへ向かった。 …北高への通学路でいろんなものを目にした。 朝、妹が着ていたような白装束の行列や、お化けの被り物を被った人。 街の街灯はキャンドルに付け替えられていて、道のあちこちには顔の模様がくり抜かれたかぼちゃが置いてあった。 …なんか違う世界に来たようだな… 「あ、キョンじゃないか」 「おぉ、国木田。おはよう」 国木田は制服だった。 さすがに学校の奴らは普通の格好なんだな。 まぁ運動会に仮装してやる学校なんてないよな。 「何を言ってるんだいキョン。去年もみんなで仮装したじゃないか」 …あ、仮装はするんですか… 「一年生の時は谷口が張り切って大変なことになったじゃないか。突然… 「俺、透明人間の仮装やるぜ!」 とか言って全裸になりだしたじゃない」 あの馬鹿は何をしているんだ!? …多少はモラルのある人間だと思ったのだが… 「教室に着いたらみんな準備してると思うよ。張り切って仮装するもの選んでたしね」 「へ?仮装って全員やるのか?」 「当たり前じゃないか!キョンだって昨日、ちゃんと用意してくるって言ってたじゃないか!」 知らねぇよ! 「え?本当に用意してないの?…考えてすらいない!?」 「いや…あの…すまん」 うなだれつつげた箱から靴を取り出す。 …国木田に責められると何か辛いものがあるな… 「とりあえず部室に行って丁度いいものがないか探してくる」 「あ、去年の映画撮影で使ったカエルの着ぐるみって残ってないの?」 「多分残ってるが…あんなのでもいいのか?」 「もちろん!仮装って言ったって特に規制は無いはずだし」 「わかった。先に教室行っててくれ」 そう言って俺は部室へと向かった。 学校の中も仮装している人で溢れていた。 …昨日いた場所と同じものとは思えないな。 「えっと部室…はこれでいいのか?」 一年半も通い続けた場所に対してこんな疑問をもつのはいささか変に感じるが… …ドアがハロウィン用に飾り付けされてて訳が分からなくなっている。 扉の両脇にはカボチャの作り物、ドアノブにもカボチャのカバー。 「SOS団」と書かれた紙は白黒の蝋燭でデコレーションされていた。 …とりあえず入ろう。早くしないと集合時間に間に合わない。 ん?部室に誰かいる? 「…長門」 「…待ってた」 扉を開けると長門が定位置で本を読んでいた。 着ているものは北高の指定の体操着…に去年の映画撮影でつかった魔女の衣装を身につけたもの。 ついでにいうとあのオモチャのロッドも携えている。 「待ってたって…俺をか?」 「…そう。あなたにこの状況について説明する必要があると判断した」 「それは良いんだが…またハルヒが勝手に望んだことを現実化させただけじゃないのか?」 「…そう。しかし今回は不明な点がいくつかある」 …不明な? 「…一つ目にあげられるのは、この状況がいつから起こっていたのかということ。思念体も全く観測できなかった」 「気がついたらハロウィンが恒例行事になっていたってことか?」 長門は僅かに髪が揺れるだけ頷く。 「…二つ目は情報操作の規模。このハロウィン現象は日本全域において発生してる」 「それって凄いことなのか?」 「…私の場合全力をつくして西日本全域」 「…理解した。まぁハルヒが満足したら普通の日常に戻るんだろ?」 「…おそらく」 「だったら今日はこの状況を楽しんでしまおう。運動会も無かったことだし」 「…そう」 まぁこれも慣れの一種なんだろうなぁ。 去年の俺だったら慌てまくって元に戻す方法を考えたりして。 …まぁこの状況も結構なんだが。 「あれ?長門、ここら辺に置いてあったカエルの着ぐるみ知らないか?去年のアルバイトの時にもらったやつ」 「…それなら10分前にあなたのクラスの人間が借りに来た」 「俺のクラス?誰だかわかるか?」 「…チャック」 「…谷口か…」 何がしたいのか全くわからないがあれが無いと俺は仮装できなくなってしまう。 「返してもらわないとな…教室に戻るよ。長門も教室に行かなくていいのか?」 「…もう少しここにいる」 「そうか」 そう言って俺は教室に向かった。 ―――――――――――― 「あ、キョンくん来たのね」 教室に着くとみんな仮装しまくっていた。 入り口で迎えてくれた阪中は犬の着ぐるみを着ていたし、他にはお化けの格好をしたやつや、誰も知らなそうな映画のコスプレをしていたやつもいた。 「キョンくんは何の仮装にするのね?」 「あぁ、俺は― 「ちょっとキョン!あんた何で制服のままなの!?」 …人の話は最後まで聞け。 というか会話に割り込むな。 SOS団団長涼宮ハルヒがそこにいた。 「何でもいいからさっさと着替えなさい!」 「カエルの着ぐるみにしようとして部室に取りに行ったら無かったんだよ」 「あら、キョンくんも着ぐるみなのね」 「無かったって…誰かが持って行ったの?」 「谷口らしい。長門がそう言ってた…ってかハルヒのその格好…」 「吸血鬼よ吸血鬼!とりあえずマント羽織ってみたかったからこれにしたの!」 何というか…攻撃的なのが全面的にでてるな… 「何か言ったかしら?」 「…何でもない…そういや谷口は?」 「今日はまだ見てないのね…」 「まじかよ…」 …とそこへ 「どっせぇぇぇぇい!」 と勢いよく扉を蹴破ってカエル男が教室に突っ込んできた。 …谷口でいいんだよな? 「あぁ、そうだぜ!」 クラスみんな唖然としている。 「いや、何でもいいからその着ぐるみ脱げ。俺がそれ着て仮装したいから。あと扉直せ」 「なんだよ、ノリ悪いなぁキョンは」 「…空気ぐらい読んでくれ。そこまでハイテンションだと逆に引いてしまう」 「そうか…」 「お前もさっさと自分の仮装でもしたらどうだ?」 「…自分の仮装…だと?」 そう言ってククク…と笑う谷口。 どうでもいいから早くカエルの着ぐるみ脱げ。 「…まぁあせるなキョン…なぁみんな、あるところに一人の男がいたとする。その男はなかなか金持ちで、また自分の着る服には一切の妥協を許さない…そんな男がいたんだ」 …勝手に語り出したよ… クラス一同の注目を浴びながら馬鹿は演説を続けていく。 「男は毎日服をとっかえた。有名な店で毎日オーダーメイド…しかし気に入るものが何もない…」 語りながらゆっくりと教卓へ歩み寄りみんなと対峙する。 「毎日のように服を仕立てる店の人は嫌気がさしていた。仕事が入るのはうれしいが、自分の作る服が1日も保たずに捨てられるのは気分が悪い。そこで店の人は考えた…だったら捨てられても構わない服を作ろうと!」 ……… 「…ねぇキョン」 「…なんだ、国木田」 「…去年の透明人間といい…嫌な予感しかしないんだけど…」 「…確かに…まぁ最後まで聞いてみよう…」 …周りの奴をみると苦笑いしている奴もいるな… 「捨てられても構わない服…それは透明な服!」 …どう考えても裸の王様だな… 「…間違いなくあの着ぐるみの中全裸だよね…」 「…だよな…おーい、誰か警察呼んでくれ」 「あ、私やっておくわ」 「サンキュー朝倉」 …今俺なんていった? 「警察です!変態がいると聞いてやってきました!」 「あ、こっちです!このカエルの着ぐるみの中の人です!」 「ち、ちょっと待て!俺はまだ何もやってない!」 「これからやるつもりだったのか。とりあえずあっちで話を聞くから」 そのままズルズルと警察に引っ張られていく谷口…じゃなくて… 「朝倉!?」 「ん?どうかしたのキョンくん?」 「なんでお前がここに!?」 「何でって…ここが私のクラスだからだけど…私がいたらそんなに変?」 変も何も…お前去年転校したことになってるはずじゃ… …と言い掛けて口を噤んだ。 「…何言ったって無駄か…」 「え?」 「…何でもない」 どうせ情報操作とかでうまい具合になってるはずだ。 何で戻ってきてるのかは知らんが長門の警告も無かったことだ。害は無いだろう。 「おーし、みんな集まってるかー?」 しばらくして岡部が入ってきた。 「あ、谷口くんが警察に連れて行かれました」 「あぁ、さっき聞いた。報告ありがとな成崎。それとキョン」 …俺? 「あの着ぐるみあとで取り来いって。警察の人が」 「あ、わかりました」 「よし、じゃあ開会式始まるからみんな運動場に移動してくれ。こっちのチームが勝ったら全員にジュース奢ってやるよ」 「「「よっしゃあ!!」」」 まぁ正直ジュース如きで喜ぶような年では無いんだが…貰えるものはありがたく貰っておこう。 「あ、そういやハルヒ、チーム分けってどうなってるんだ?」 「あれ?結構前にプリントで配られなかったかしら?」 「…すまん、無くしちまった」 …元から無かったんだがな… 「全く…SOS団の団員ならそういうところはしっかりしなさいよね…」 「…へいへい」 「真面目に返事しなさい!」 「…はい」 とりあえず大ざっぱに聞いたところ、赤組が、俺達のクラス、鶴屋さんと朝比奈さんのクラス。 んで白組が長門のクラスと古泉のクラス。 …いい感じにSOS団が分かれてるんだな。 「ところでハルヒ、優勝したら何かあるのか?」 「あんたそんなことも忘れたの!?せっかく古泉君が情報仕入れてくれたのに…えっとねぇ…ゴニョゴニョ…」 「へ?嘘だろそれ?」 「という話をもちまして、私、校長の前説は終わりにいたします。尚優勝チームには、校舎の屋上に山と積まれたお菓子が与えられます!」 マジでかあぁ!!! 「ほら、言ったでしょキョン!」 「いや…あれどうやって積んだんだよ」 運動場から見てもゆうに校舎の3分の1はありそうな量のお菓子が屋上につまれている。 「生徒会の人達じゃないの?あの会長なら黒い方法でやりかねないわ!」 そう言ってハルヒは運動場の一角を睨みつける。 運営テントのしたで涼しい顔をしながらパイプ椅子に座っている会長が目に入る。 というか吸血鬼の格好だとハルヒの睨みも一層迫力が増すな… 「あんたのそのカエル姿も滑稽だけどね」 …うるさい。 取り合えず頭だけでも脱ぐか。 「というかあの会長は仮装しないわけ!?」 「性格的に出来ないんじゃないのか?」 「年に一度のお祭りなのに…」 …まぁ俺としては日陰でのんびりしてる会長より… 「ほら、会長、早くこれに着替えてください!」 横で王様の衣装を押しつけてる喜緑さんが100倍気になるんだが… ブルマにネコミミって反則技じゃないのか?…尻尾までつけてるし… 「…そんなにヤラシイ目で見てるわけ?」 違う違う!ただなんというかあの人のネコミミ似合うなとか妖しい感じが良いとかそんなことしか…痛ぇ!つねるなハルヒ!! 朝倉もそんな目で俺を見るな!! 「全くもう!」 というか喜緑さんなら不思議パワーであれくらいの量のお菓子は何とかできそうだな… 「ちなみにあの二人はどっちのチームだ?」 「白組よ」 長門と喜緑さん。 宇宙人二人相手ですかそうですか。 勝てる気がしないんだが… 「何弱気になってんのよキョン、今年は絶対優勝するわよ!」 「そうだよキョン。逮捕された谷口のためにも頑張ろうよ!」 「あいつは自業自得な気がしてならないんだが…ちなみに国木田」 「え?何?」 「…その衣装は何だ?」 「…ゴスロリの衣装だよ。阪中さんが用意してくれたんだ」 …そういうのって女性がするんじゃないのか? 「違うのね!国木田くんは童顔だから似合うと思ったのね!」 「…去年もそう言って僕に着せたよね…」 「…ゴメンなのね」 「まぁ自分で着る衣装迷ってたから助かったよ」 「ほら、国木田くんに阪中さん、喋ってると注意されるわよ」 朝倉の衣装は…エプロンだけ? 「え?そうよ?変かしら?」 仮装になるのかそれは…っていうかブルマにエプロンっていいな… いや、何でもない!耳を引っ張るなハルヒ!! 「えーっと、会長が衣装に着替えているため、生徒会書記の喜緑が開会宣言をさせてもらいます。というかみんなで元気よくさけんでしまいましょう!!せーの!!!」 「「「「トリックオアトリート!!」」」」 こうして祭りが始まった。 ――――――――――――― 「結構父兄の人来てるんだな」 「まぁお祭りみたいなものだしね、他の高校に比べて見に来る人多いみたいよ」 子供もたくさんいるなあ… 「ハルヒの家は誰かくるのか?」 「んーどうなんだろう。一応伝えたけど…仕事で来ないと思うわ。一応ハカセくんにも言ったんだけど、テスト勉強でいけそうにないって」 ハカセくんって? 「ほら、私が家庭教師してる子」 「あぁ、あの子か」 『それでは、第一競技を始めたいと思います。司会進行は、名も無きコンピ研部長がお送りします』 「あ、始まるみたいね」 「プログラム見せてくれ…3年生の借り物競走か…」 お、朝比奈さんだ。 「あの衣装去年の映画で使ったウエイトレスじゃない?やっぱりあの子は可愛らしいわねぇ」 「走るのはものっそい遅いけどな…」 やっとお題の紙の所までいったようだが… 「…紙見たまま固まってるわよ?」 「ってか周りの人も固まってない?はいキョン。お茶」 「お、サンキュ国木田…お題何が書いてあるんだろうな?」 「多分そういうのって生徒会の人が考えるんじゃないかしら?」 「江美里が考えたとしたら危ないわよ」 「え、何?朝倉なにか知ってるの?」 っていうか喜緑さん呼び捨て? 「あぁ、ちょっとした知り合いなのよ。江美里、あぁ見えて腹黒いからえげつないこと書いたかもしれないわ」 「あ、第一走者がみんな運営席にいったね」 「何か揉めてるわよ…あ、みんなスタートに戻ったわ」 『えー…只今の第一レースに置いて、走者全員のお題に「ドッペルゲンガー」という無茶ぶりが施こされていたので無効となりました』 …えげつないってレベルじゃねーぞ。 無差別攻撃かよ。 「ね?ひどいでしょ?」 「というか何で喜緑さんはそこまで勝ちに執着するんだ?」 「最近お菓子にハマってるんだってさ」 …もうなんでもいいよ。 ちなみに朝比奈さんは「モデルガン」を引いたらしく、なぜかたまたま大森電気店の店員と見学に来ていたヤマツチモデルショップ人がなぜかたまたま持っていたモデルガンを片手にパタパタとゴールしていった。 「さりけなーく映画の宣伝になったのかな?」 「言うな、国木田…」 さすがに最初の無茶ぶり以外はまともなお題のようでちゃくちゃくと進んでいった。 「あ、キョン!あれ鶴屋さんじゃない」 「…本当だ。あの人は…和服?」 「あの人って何着ても似合うのね。ルソーにも沢山着せてあげたいのね」 …犬連れてきたのかよ… 「お母さんが連れてきてくれたのね」 「あ、あのレース江美里もいるわね…面白いものが見れそう」 「二人とも負けず嫌いぽいっしね」 始まった…二人とも走るの速いな… 「ぶっちぎりなのね。涼宮さんと朝倉さんとタメを張る速さなのね」 「だれかぁー!!『猫』連れてきてる人いませんかぁ!?いたらちょろっと貸して欲しいっさ!」 鶴屋さんのお題は『猫』か… 「キョン!今すぐあんたの家からシャミセン連れてきなさい!」 「無茶言うなよ…」 なかなか猫連れてくる人もいないだろう、犬ならリードを付けておけば安心だが… 「あ―!鶴にゃん!シャミで良かったら連れて行っていいよ!」 「サンキュ!妹ちゃん!すぐ返すっさ!」 …なに連れてきてんだあの野郎。 「あの隣の子は妹さんの友達なの?」 「あぁ、あれ同級生。ミヨキチってんだ」 「最近の子は発育が早いのね…」 …むしろあれは特殊な気が… 「妹ちゃんの友達なら挨拶に行きましょうよ!」 「何でそうなる。それに鶴屋さんは応援しなくていいのか?」 「大丈夫なんじゃない?ほら、他の人はまだお題のもの探してるみたいだし」 「国木田くんの言うとおりなのね。ルソーはここに置いていって大丈夫かな?」 どっかに繋いでないと危なくないか? 「…それもそうなのね。私はお留守番してるのね」 「良かったら私が預かりましょうか?」 その声を聞いてレースを観戦していた朝倉がピクッと動く。 「…喜緑さん?レースはどうしたんですか?」 「いえ、探しものをしていたもので」 そう言って微笑みながら『犬』と書かれた紙をヒラヒラと見せる。 「駄目よ阪中さん!勝負ごとなんだから敵に手助けしちゃだめよ!!!」 「そ、それもそうなのね、駄目なのね…ってルソーは?」 「…もう江美里が連れてったわよ」 そう言って朝倉が指指した先にはもの凄いスピードで鶴屋さんを追いかける喜緑さんがいた。 「ちょっと!ルソーしっぽ引っ張られてるわよ!!!」 「ルソー!!!あんな魔性のネコミミ女に着いていったら駄目なのね!!!」 …なんとなく阪中の中で喜緑さんの位置付けが決まってしまった気がする。 「…ってか見てたなら止めてやれよ朝倉…」 「…あなたも見てたじゃない」 …何? 「江美里が『犬』って書かれた紙を見せてから、ルソーを奪ってレースに復帰するまで0.8秒よ」 「…残像かよあれ」 「わかってても止められるレベルじゃないのよ、あれは」 まぁレースは鶴屋さんが勝つだろうが… 「さすがに江美里も人が沢山いる中では変なことしないでしょうね」 「…そういう発言するってことは…お前やっぱり長門と同じ…」 「宇宙人よ?今更何で?」 いや今更というか…お前はカナダに行ってた筈で…かくかくじかじかで。 「あぁ、それは涼宮さんの情報操作で、ハロウィンと運動会が追加されたのと一緒に私も戻ってきたみたいなの。それで、長門さんに頼んで今日1日だけクラスに戻してもらったの」 「…ってことは今日が終わったらまたいなくなるのか?」 「…寂しい?」 まて、微笑みかけるな。 反則並の笑顔だそれは。 「…別に。刺された時のトラウマが蘇らんですむ」 「信用ないなぁ、私」 「ってかすぐそこにハルヒ達がいるのにこんな話してていいのか?」 「大丈夫よ。レースに夢中になってるみたいだし」 「いけー!鶴屋さん!!後少し!!!」 「…今鶴屋さんの横、何か通り過ぎていかなかったかな?」 「あーっ!!!あのネコミミ女!!!!ルソーのこと投げたのね!!!!」 慌ててルソーの下に走って行く阪中達を見送りながら、朝倉は寂しそうに言った。 「…やっぱり、私ももう少しだけいたいんだ。みんなと」 「…まぁ、たまになら着てもいいんじゃないか?…情報操作でなんとかなってるみたいだし」 「ふふ、ありがとう」 「…クリスマスにでも部室にくれば、鍋でもやってると思うぞ」 「…うん」 …まぁ…その…そんなこんなで第一種目終了。 …顔真っ赤だったろうな…俺… ちなみに喜緑さんは反則で負けたようだ。 ―――――――――――― 『えー、次の競技はクラス代表による「障害物競争」になります』 「クラス代表か。俺たちのクラスは誰がでるんだ?」 「あぁ、僕だよ」 「山根か、早く行かなくていいのか?」 「朝倉さんの髪のにおいを嗅いで、朝倉さんのタオルをしゃぶりつくしてから行くよ」 …今酷い変態紳士を見た気がする。 「まぁいいか…国木田、障害物って何があるんだ?」 「えっとね…網くぐりと、飛び箱飛びと、あと飴玉とるやつ」 …飴玉とるやつって何だよ。 「ほら、粉の中にある飴玉を口を使ってとるやつ。名前よくわかんないや」 「なんとなくイメージは出来たがな。誰か知り合いはでてるかなっと…」 「ん、朝比奈さんまた出てるみたいだね」 …朝比奈さんが障害物競争ってミスチョイスじゃないのか? 「あぁ、それはみくるが自分からやってみたいって言ったのさ!」 「のわっ!鶴屋さん!びっくりしましたよ…」 「いやぁ、ゴメンっさ!そっちの可愛い衣装の子は国木田かなっ?」 「はい、そうです。さっきは一位おめでとうございます」 「ありがとう!しっかし妹ちゃんがシャミセンを連れてきてくれて助かったよ。キョンくん、あとでお礼を言っておいておくれ」 「わかりました…あ、今のレース終わっちゃったみたいですね…朝比奈さん見逃しちゃった…」 「あれ?でもゴールのところに朝比奈さんいないよ?」 どこいったんだ?と辺りを見回そうとしたその時 「ぷっ…ぷぷっ…ダメだっ…アーッハハハハハハハハハハハハハハハ…」 突然鶴屋さんが爆笑し始めた。 「…あれっ…あれみるっさ…アハハハハッ…」 苦しそうに笑う鶴屋さんが指差した先をみると… 「はぅ~…動けないですぅ…」 最初の網に絡まったまま全く進んでない朝比奈さんがいた。 「…まぁあの人らしいというか」 「…あれでこそ朝比奈さんだよ」 「みくるー!頑張るっさー!飴玉が待ってるにょろよー!」 「そうです!飴玉が待っていたのです!」 おぉ、抜け出した。 やればできるんだなぁ。 「みくるは本気になるとなかなか侮れない力をだすからね」 「…でもあれはやりすぎだと思うなぁ…」 「やりすぎって?」 そう言って運動場の方をみると、飛び箱にぶち当たって派手にすっころんでる朝比奈さんがいた。 「どうやら飛び箱に真正面からぶつかってったみたいだね」 「何でお前はそんなに冷静なんだ…」 「だってここで慌ててもしょうがだいじゃないか」 「ありゃ、みくる気絶しちゃったみたいだね。ちょっと私、保健室まで運んでくるっさ!」 「お疲れ様です。良かったらこの飴玉持って行ってあげてください」 そう言って谷口の鞄を漁って発見した袋を渡す。 「おぉ!ありがとう!きっとみくるも喜ぶよ!!」 あっと言う間に現れてあっと言う間に去っていったな… 「…まぁあれはあれであの人らしいというか」 「…あれはあれで鶴屋さんらしいよな」 「おっ、キョンに国木田、そこにいたのか」 「榊か。どうした?」 「どうしたって、次の競技はうちのクラス全員参加だろ?集合かかってるぞ。先行ってるからな」 「了解、すぐ行くよ。ところで国木田、質問があるんだか」 「まぁ何となーく予想はできるんだけど、何」 「次の競技は何だ?」 「…司会の人が教えてくれるよ」 ――――――――――――― 『引き続きまして司会進行役のコンピ研部長です。作者が設定を忘れかけていました。さて、次の種目は二年生による「玉入れ」になります』 「というわけで白組の連中をめっためたに叩きのめすわよ!!特に特進クラスのがり勉どもなんかけちゃんけちゃんにしてやりなさい!!!!」 …正直、玉入れごときでそんなに熱くなるなよと突っ込みたい。 玉入れ籠の真下で仁王立ちをし、わめき散らすハルヒを見て何となくそう思った。 「何寝ぼけたこと言ってんの!勝負事には何事にも全力でとりくむのよ!勝つ気できなさい!勝つ気で!」 「まぁ勝てばお菓子も沢山もらえるのね。競技も楽しめば一石二鳥なのね」 …そういうもんか。 そういや玉入れなんていつぶりだろう。 多分小学校低学年のころにやったきりなんだろうなぁ。 そう思い、地面に置いてある赤玉をなんとなく拾ってみる。 この頼りない感触が妙に懐かしい。 「おや、あなたも玉入れは久しぶりでしたか」 「お、古泉。その格好は…シェークスピアだっけ?去年の文化祭のやつ」 「覚えていてもらえましたか」 いや、文化祭でのお前はそれくらいしか印象にない。 「…そうですか。とりあえず、今日の運動会では勝たせてもらいますよ。機関の方でも物理的物質が無理やり作られたわけじゃないので今回の件は重要視しなくてよいとのことです」 「いいのか?お前らが勝ったりしたら閉鎖空間が発生するんじゃないのか?」 「そうなるかどうかは、あなたが一番良く知ってるかと思いますが」 …まぁ負けて悔しがっても閉鎖空間は発生させないだろうな。 「まぁやるからには全力かかってこい。ハルヒは大いに張り切ってるが。あ、あと長門に言っといてくれ、不思議パワーは無しだって」 「えぇ、わかりました」 『それでは間もなく競技開始になります、皆さん位置についてください』 「とりあえず玉だけ持っておくか」 「出来るだけ多くなげたいもんね」 俺と国木田が赤玉を手にしたそのとき、 ピピーッ!!!! 突然笛を吹かれた。 何だ?開始の合図じゃないよな 「駄目ですよ、開始前に玉を持つのは、フライングになりますよ」 「いや、何やってるんですか喜緑さん…」 「何って、不正行為が無いよう見張ってるだけですよ。生徒会の仕事です」 確かに、よく見るとそれっぽいのが二、三人いるな。 「次に開始前に玉を持ったら腕を切り落としますからね」 「…了解です」 『それでは、始め!!!』 パァンという乾いた音とともに一斉に玉に群がり籠にむかって放り投げる。 「思ったように入らんな」 「意外と難しいね。とりあえず投げるだけ投げちゃおう」 「ちょっ、やめっ、キョンくん助けて!!」 朝倉?一体どうした? 「長門さんが執拗に玉ぶつけてくるの!何とかして!!」 「何とかしてっつったって…」 長門の方をちらりと見ると、必要最低限の動きで籠に玉を投げ続けている。 …一発も外してないのが気になるが 「特に問題無いと思うんだが」 「キョンくんが見てる時に投げるわけないでしょ!!痛っ!!」 「またか?そんな素振りが全く見えないんだが…」 「今のは江美里よ!!」 「いえ、何のことかさっぱりです」 そう言って喜緑さんはにっこり微笑む。 「…反論したら怖そうなんだが」 「懸命な判断ね。トラウマを植え付けられるわよ」 「…とりあえずどこぶつけられたんだ?」 「…全部おしり」 うん、反応に困る。 「おしりにぶつけられたのかい?早くみせてごらん、ほら、ブルマをめくって。僕がしてあげようか?」 山根、それ犯罪。 「うん、それ無理」 朝倉、笑顔でナイフを出すな。 「ちょっとそこ!キビキビ投げなさい!!!」 ハルヒ、助けてくれてありがとう。 収集がつかなくなってたところだ。 「とりあえず長門は俺が見張っといてやるから」 「ありがとう」 しっかしハルヒのやつは凄いな。 長門に負けず劣らずの正確さでポンポン入れていく。 朝倉も加わって投げるので、気がついたら圧倒的な差で赤組が勝っていた。 「「…チッ」」 …長門と喜緑さんの舌打ちがハモった気がしたが気のせいだろう。 「前半終わりか。一年生が頑張ってくれてるみたいだな」 「白組にリードをゆるしてるけど、まだ十分追いつけるのね」 「まぁお昼ご飯食べて力つけましょう!」 『ここで、お昼の休みに入る前にもう一つ募集性の競技を行いたいと思います』 …何? ――――――――――――― 『競技は「三人四脚」です。ただし制限があります。家族で参加してもらいます』 …恥ずかしいだろそれ。 『尚、この競技にも得点は加算されます』 「キョン!出なさい!!!」 「馬鹿言うな。身内は二人も来ていない」 っていうか本当に参加者いないな。 「まぁ高校生にもなって身内と三人四脚は恥ずかしいよね」 「多分だれも出ないだろ。得点のプラスマイナスは無し。さっさと昼飯にしてしまおう」 「…ねぇ、あそこのスタートラインに立ってるのって古泉くんじゃない?」 まさか。 あいつの身内が登場したことないのに作者が書けるわけ… 『白組からひと組参戦です。2-9の古泉一樹くん。親子で参加です』 森さんと新川さんなにやってんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! 「ちょっとまて!あれ家族じゃないだろ!!!」 『古泉一樹くんは家族と生き別れになったため、親身になって世話をしてくれた二人と一緒に参加することを特別に認めました』 「無駄よキョンくん。どうせ江美里が糸引いてるから」 「キョン!あんたも妹ちゃんとでなさい!勝ってきなさい!!!」 「あ、あの~…お兄さん…」 「だから身内が妹一人じゃしょうがないだろ!!」 「…お兄さんってば…」 「シャミセンでもくくりつけて行けばいいのね。ルソーが良ければ貸してあげるのね」 「お兄さん!」 「猫や犬なんか論外じゃないか!」 「キ、キョン!同じ中学校の中河だけど俺でよければ!」 「知らん!お前なんか知らん!アメフト部に帰れ!!!」 「 お 兄 さ ん ! ! 」 「のわっ!!ミヨキチ!?どうしたんだ?」 「妹さんに伝えてきてって言われたんですけど、もしよかったら… 「…おや、あなたも参加ですか」「…古泉、目が死んでるぞ」 『赤組からは2-5の○○くんことキョンくんの参加です。妹さんと従姉妹に当たるミヨキチさんと走ります』 「…あなたも銀髪の侍のように死んだ目になってますよ」 …声優ネタは止めろ。 わからない人が困る。 「あの…お兄さん、迷惑でしたか?」 「いや、いいよ。せっかくミヨキチが誘ってくれたんだしな」 「わーい!キョンくんと遊ぶの久しぶり~☆」 …お前はもう少し空気を読んでくれ。 …さっきから「ロリコン」、「シスコン」って単語が行き交ってるんだ。 「…で、お前は何で参加したんだ?」 「…長門さんに『…行って』と」 「…拒否しろよ」 「『…行かないと私と喜緑江美里で一生モノのトラウマを植え付けることになる』って…」 …あぁ、それは無理だな。 「…何されるかわかったもんじゃないですから」 「…なんかスマンな。で、森さんはメイド服、新川さんは運転手の姿ですか」 「最近はこれが普段着になってるもので。元から車はよく運転しますしね」 「メイド服も馴れると動きやすいですよ。負けませんから」 …二人ともやる気満々ですか。 もう俺と古泉の精神がズタボロなので詳しい描写は避けさせてくれ。 結果だけ言うと、歩幅が殆ど違う俺と妹とミヨキチが三人四脚なぞできる訳が無く、前日に練習したんじゃないかってくらい息のぴったりな古泉たちにぶっちぎりでゴールされた。 あと、本日限りではあるが、「シスコン」及び「ロリコン」の称号を手に入れた。 いやな、別に子供とくっついて走ってもなんも嬉しくないぞ? いくらミヨキチが妹より成長が早くて…こう…いい体つきだとしても全然嬉しくなかったからな。 「キョンくんごめんね?…転んでばっかりで」 「別にいいよ。楽しかったか?」 「うん!ミヨキチちゃんは?」 「私も楽しかったです!」 …まぁいっか。 その頃、谷口は 「で、何であんなことしようとしたの?」 「いや、だからまだ何もしてなかったじゃないですか…」 「まだ、ってことはしようとしたんだね?」 「違いますよ、ただ着ぐるみが素肌にフィットする感じが好きで…いや、まぁ脱いでましたけど…パンツは履いてたからセーフじゃないっすか?」 「嘘ついちゃだめだよー。着ぐるみの下全裸だったじゃないか」 「…はい、すんません」 「あ、あと谷口くんだっけ?君の身の回り調べさせてもらったんだけど…これ」 「…!?」 「『涼宮ハルヒ』に『朝倉涼子』、どちらも君の名前じゃないよね」 「…そのリコーダーは…」 「君の机からでてきたんだけど、これって窃盗…」 「違う!俺じゃない!!みんなが体育でどっかに行ってる間に強奪して吹いていたなんてことは無いんです!誰かの陰謀です!!」 「一応、舌の細胞とか唾液から使用した人間が割り出せるけど?」 「すいません、僕がやりました」 「おじさん正直な人は嫌いじゃないよ~」 「あの、トイレ行きたいんですけど…いいすか?」 「あぁ、いいよ。ちょっと彼、トイレまで連れてってくれない?」 「…では」 「何リコーダー持って行こうとしてんのさ」 「…つい」 事情聴取を受けていた。 ――――――――――――― 「ゲッ!!」 「ん?どうかしたかいキョン」 「弁当忘れた…」 慌てて用意したからな… 「何かわけてあげようか?」 「いや、いい。妹に何かわけてもらってくる」 「そうか。じゃあ先に食べてるね」 「あぁ、すまんな」 「あ!!キョン!!!あんた昼ご飯は!?」 すまんなハルヒ。 忘れちまったからお前が横取りする分は無いんだ。 「えっ?いや…それなら私の…」 「すまん!後にしてくれ!すぐ戻ってくるから」 「ちょっと!待ちなさい馬鹿キョン!!」 で、妹はどこにいるのだろうか… 当てもなく探しに来たものの、保護者の人が大勢いてわからん。 虱潰しに探すか… 「おや、キョンじゃないか」 その声は… 「佐々木か、それと…橘と九曜だったか。来てたのか」 「台本にここに来るように…じゃなくてですね」 「純粋に見学に来ただけさ。さっきの三人四脚は見ものだったよ」 …止めてくれ。トラウマになりそうだ。 「──…ロリコン、シスコン───この場所は…知らない事が──たくさん…ある」 「九曜さんはまだ知らないままで良いのです」 「まぁ僕はキョンはロリコンでは無いと思っているよ」 …シスコンは? 「「「…………」」」 二人とも目を反らすな!! 九曜も「なるほど」みたいな顔するんじゃねぇ!!! 「まぁいい…そういやあの未来人はどうした?」 「あ、藤原くんならあの電柱の陰にいるのです」 「──…あそこ」 そう言って九曜が指指した先をみると、確かに恨めしそうにこっちを見ている男が1人いた。 「…何であいつはこっちに来ないんだ?」 「…台本が無いとか」 何だそりゃ。 「『これは規定事項、別に僕が本編に出ないことは連絡済みだ』とかブツブツ呟きながら着いてきたのです」 「─彼は…とても──意地っ張り」 「まぁ寂しくなったらくるだろう。ところでキョンは何をしにここへ?」 あぁ、妹探してたんだ! 「さっき一緒に走ってた子か」 「すまんな、あんまり話せなくて、また今度な!」 「うん」 さて、もう一回探すかな。 ―――――――――――― 「…やっと見つけた」 「あ、キョンくんどうしたの?」 「昼飯を忘れたから何かもらいに来たんだ…っていうか」 「また会いましたな、キョンくん」 機関の人総出で何やっとるんですか。 「いや、森と新川が連れてきたんだ。『戦い会ったもの同士で和解したわ』って」 「ミヨキチちゃんが妹さんと同い年って聞いて驚きました。私がこのくらいの時なんか…いや、何でもないです。鬱になりました」 「いや…その…」 ミヨキチ、気にしなくていいぞ。 「…はい」 「そういや圭一さんと裕さんは仮装してないんですね」 「まぁ仮装って年でもないしね」 「…私と森の立場はどうなるのですかな?」 「…すいません」 合宿の時も思ったが、機関の人って仲良いんだな。 「あ、ねぇねぇキョンくん」 「ん?どうした?」 「ご飯全部食べちゃった」 …えええええ!! 「ご、ごめんなさい!」 「いや、ミヨキチが謝ることじゃないさ。弁当忘れた俺が悪いんだし」 「私たちの分あげましょうか?」 「んー、クラスの奴らから分けてもらいます。すいません」 「そうですか、ではまた会いましょう」 「…というわけで何かくれ」 「もう全部食べちゃったよ」 あきれた顔で国木田は言う 無理しないでもらって置けば良かったな。 「どーすんの?何も食べないまま午後の部に入るの?」 「まぁ食べるものないしなぁ…」 …我慢するか。 「あ、そうだ。朝倉、ハルヒ知らないか?」 「…キョンくんが馬鹿やったから落ち込んでるわよ」 「へ?俺が何したってんだ」 「…はい、これ、涼宮さんから」 「弁当?」 「今日の為に作ってたみたいよ」 「…俺に?」 「じゃなかったら誰に渡すのよ」 …じゃあさっき俺を呼び止めたのは… 「食べたらちゃんとお礼を言うことね。次にまた馬鹿やったら…」 …やったら? 「刺すわよ☆」 …了解。 ハルヒは運動場の隅でぼーっとしていた。 …正直なんて言葉かけて良いかわからんが… 「…ハルヒ」 「…何よ」 うわ、怒ってる。 当たり前か… 「その…弁当ありがとうな。美味かったよ」 「………」 …あの…ハルヒさん? 「せっかく作ってきたのにどっか行っちゃうんだもんね」 「ぐっ…だからすまんって…」 「…まぁいいわ。今度100倍返しね!!」 …まじでか。 「あったりまえじゃない!!このあたし自ら弁当を作ってあげたのよ!!誠意を尽くして感謝なさい!!ほら、ちゃっちゃと白組の連中叩き潰しに行くわよ!」 「…へいへい」 と、言うわけで午後の部開始。 ―――――――――――― 『午後の第一種目は、クラス対抗の「パン食い競走」になります』 …昼飯食ったあとにこの競技か。 「というわけで行ってくるわ」 「朝倉さん行ってらっしゃいなのね」 お、長門もいるな。 宇宙人対決か。 「キョンくんや」 …ん? 「こっちだよキョンくんや」 「国木田、呼んだか?」 「え?呼んでないよ」 「下なのだよ」 …下? 「…鶴屋…さん?」 「ちゅるやさんなのだよ!」 …説明は不要な気もするが…鶴屋さんをちっさくして人形みたいにしたものがそこにあった。 「ものじゃないよ!生きてるんだよ!」 「あ、ごめんなさい…初めまして」 「初めまして!」 「…キョン…その子誰?」 「ちゅるやさんなのだよ!君は国木田くんかな?」 「あ、はい。そうです」 …で、どうしましたか? 「提案なんだけどさ!パン食い競走じゃなくてチーズ食い競走にしたら良いと思うのだよ!」 「………」 「………」 「スモークチーズだとなおよいのだよ!キョンくん、国木田くん、どうしたんだい?」 「いや…あの…運営に言った方が早いかと…」 「国木田くんナイスアイディアなのだよ!ちょっくら申し出てくるっさ!ところでキョンくん?」 …スモークチーズは無いですよ? 「…にょろーん」 …行っちゃった。 「本当に運営に申し出に行くのかな」 「…知らん。というか無理だろう」 『ここで迷子のお知らせです…え?迷子じゃない?…運営?チーズ?…あぁ、運営ならすぐ隣です』 「…行ったのかよ」 『あ、書記の…いや元カレって何なんですか?…企画変更?…あ、わかりました』 「…企画変更だって」 「…知らん」 『突然ですが競技の変更をお知らせいたします。午後の部の第一種目は「カレー早食い競走」になりました』 なんでだあぁぁぁぁぁぁ!!!! 「…キョン」 「…言うな、頭が痛い」 「…もう走る必要無いのね」 長門がすでにガッツポーズしてるのが見える。 というか間違いなくお前と喜緑さんの陰謀だろう… ってかレース進行遅い!!! 「カレー一杯食べきらないと先に進めないからね…」 「あ、朝倉さんなのね」 「…いくら足が早くても早食いは厳しいか…」 「…長門さんいつカレー食べた?」 「…一瞬だったのね。手品みたいなのね」 ダメだ…休憩挟んだはずなのに頭が痛い… 「少し休んでくれば?次の種目、キョンがでるんだし」 「へ?そうなのか?」 「そうだよ。出番になったら呼びに行くから」 「わかった。あっちの方にいるよ」 運動場の隅のベンチに腰を下ろす。 「…疲れたなぁ」 秋って色んな行事があったんだなぁ… あんましハロウィン要素無い気もするが…誰か俺がカエルの着ぐるみを着用していることを覚えてる奴はいるのか? っていうか今現在29日、31日に間に合う気もしない。 無理に全員だそうとすっからこんなグダグダになるんだよ… 「あんまりメタな発言したら駄目ですよぉ」 …朝比奈さん 「久しぶり、キョンくん」 …(大)。 「…どうかしたんですか?」 「うん、せっかくの企画だからやって来たっていうのと、伝えたいことがあって」 「俺にですか?」 「今の時代の私に、『中に入ったら明日の今に時間移動して』って」 「はぁ…わかりました」 って、中ってどこですか 「その時がくればわかるわ」 というかその一連の行為に何の意味が… 「意味はわからなくとも、きっと必要な時がくるわ」 「…そうですか」 「おーいキョン!出番だよ!」 「あ、次俺が出るらしいんで」 「頑張ってね、私も最後まで見守ってるわ」 「ありがとうございます」 ちなみにカレー早食い競走はなぜか赤組が勝ったようだ。 まぁ長門以外高速で食えないからそうなっても可笑しくはないか。 ――――――――――――― 「あ、キョン!早くしなさい!」 「あぁ、すまん。ハルヒも次の競技に出るのか?」 「はぁ!?出るも何も 『次の競技はクラス代表による「大玉転がし」になります。各走者は位置についてください』 あたしとあんたで転がすんじゃない!」 あ、そうなのか。 「すまんすまん。少し休んでた」 「全く…」 「で、俺たちは何番目に走るんだ?」 「えっと…最後から三番目だから…トラックのあの位置ね」 …あれ?あの位置にいるのって… 「生徒会長じゃない!」 「…喜緑さんもいるな」 会長はこちらを一瞥すると、苦々しい顔をしてそっぽを向くのに対し、喜緑さんは柔らかい笑みを向けてくれた。 「今はまだ白組がリードしてるようだけど、最終的には赤組が大逆転してみせるからね!覚悟しなさい!!」 「そうはいきませんよ。私と会長の無敵ペアで返り討ちにして差し上げます」 …会長。 「…何だ」 「…王様の衣装似合ってますね」 「キョンくんもそう思いますか。実は私が選んだんですよ、これ」 「喜緑さん、良いセンスしてるわね!高慢チキそうなところがぴったりだわ!!」 「お前がいうな、ハルヒ。また頭が痛くなる」 「…キョン、だっけか?お前も苦労してるんだな」 …会長こそ。 「キョン!ぼーっとしてないで!あたしたちの番よ!」 「っと、すまん」 赤組リードで俺達に大玉が渡される。 この感覚も懐かしいなぁ。 しかしすぐ後ろに会長と喜緑さんのペアも迫っている。 …というか差が縮まってるのがわかる気がする。 「キョン!もっと早くしなさい!!」 「これで全力だ!!」 白と赤の大玉が並ぶ。 ちょっと、何ぶつけてるんですか喜緑さん。 「何のことだか存じませんが?」 「喋ってる暇があったら足動かしなさいよ!!」 結局、平行したまま次の走者にバトンタッチ。 「…抜けませんでしたか」 残念そうに喜緑さんは言う。 「あんたがもう少し真面目にやれば引き離せたのよ!この馬鹿キョン!!」 「ふざけるな、俺は全力で走ったぞ!」 「よそ見したりしてたじゃない!!」 「あれは大玉をぶつけられたからで!!」 「…お取り込みの所申し訳ないのですが、この大玉送り、白組の勝利のようですよ」 ゴールを見ると、確かに白組のアンカーが飛び跳ねながら喜んでいるのが見える。 「残る競技も後わずか、赤組が逆転できるかどうか…楽しみにしてますね」 そう言うと喜緑さんは運営席に戻っていった。 「キョン!優勝できなかったらあんたのせいだからね!!」 ハルヒもそういい残して去っていった。 …というか何でそうなるんだよ。 「あ、キョンくん…かな?」 苛々しながら立ち尽くしていると声を掛けられた 「えっと…岡島さん?でしたっけ…ENOZのドラムの」 「そうそう!覚えててくれたんだ!」 他のメンバーの人は来てないんですか? 「なかなかみんな予定会わなくてね。去年卒業したとはいえ、北高は懐かしいなぁ」 「そうでしたか…」 「そういえばさっき、涼宮さんと揉めてたみたいだけど…どうしたの?」 …あぁ…実はですね… 「…というわけで…ハルヒを怒らせたみたいで」 「アハハハ…なんか涼宮さんらしいなぁ…」 「…笑い事じゃないですよ」 「涼宮さんは、多分勝ち負けにはそんなにこだわって無いと思うわ」 「………」 「多分この運動会を全力で楽しもうとしてるんじゃないかな?」 「…まぁ…そうだと思いますが」 「私だったら、せっかく一緒に走ってる時に、よそ見されるのは嫌だな」 ……… 「あと、一応勝負も諦めちゃ駄目だよ?」 「…へ?でも今ハルヒは勝ち負けにこだわってないって」 「うん。何て言うのかなぁ…『負ける!』って時でも諦めちゃ駄目だと思うの。ほら、文化祭の時、メンバー足りなくなって演奏できなくなってたじゃない。私達」 「あぁ、それでハルヒと長門が加わったんでしたよね」 「うん、涼宮さん達のおかげでライブすることが出来たの。メンバーは揃わなかったけど、凄く楽しかったわ」 …えっと…つまり… 「どうせ負けるにしろ勝つにしろ、笑って終われたほうがいいでしょ?」 「…はい」 「よし、それでこそ男の子だ!」 「なんかありがとうございます」 「いやいや、いいんだよ。涼宮さんにヨロシクね」 「わかりました」 「と、言うわけで、ここから逆転を狙いにいく勢いでやってこうと思う」 「いや、別にそう思うのはキョンの勝手なんだけどさ」 「あと二競技だけなのね」 「…なぬ!?」 「まぁ逆転できなくはないけど…二つとも勝たないと辛いわね。でも、次の競技は江美里がでるわよ」 …なんと。 「というかハルヒはどこだ?」 「わかんない。大玉転がしのあとどっか行っちゃったみたい…まさかまた馬鹿したの?刺していいのかしら?」 「…よくないよくない。ってか馬鹿してないから」 「…ならいいけど」 「で、次の種目は?」 「何か仮装を利用した競技みたいなのね」 ――――――――――――― 『えぇと、次の競技はクラス代表による「早着替え競争」になります。走者は中央に置いてある仮装から一つ選んでボックスに入ってもらいます、その後、所持した仮装に着替えてからゴールを目指してもらいます』 また適当な。 「キョン、作者も必死に考えたんだ。察してあげて」 「あ、朝比奈さんもでるみたいね」 あぁ、復帰したのか。 『中に入ったら明日の今に時間移動して』 …ん? 朝比奈さん(大)の言ってた中って、あのボックスのことか…? 「キョンくん?どうかしたのね?」 「あ、ちょっと朝比奈さんのところに行ってくる」 「あれ?キョンくん、どうしたんですかぁ?キョンくんもこの競技にでるんですか?」 「いや、そういうわけじゃないんですけど…」 「あ、飴玉ありがとうございましたぁ。凄く嬉しかったです」 「いえ、どういたしまして…あの朝比奈さん、訳は言えないんですけど、あのボックスの中に入ったら、明日の今に時間移動してもらえますか?」 「え?…無理無理!無理ですよ!そんないきなり言われても…あれ?未来から連絡…ふぇ!?最優先コード!?何で!?…あの、指令が来ました。キョンの言うようにしろ、って…」 …何がどうなってんのかさっぱりわからないが、こうすることが規定事項になってるようだ。 「…ということで、ヨロシクお願いします」 「は、はいぃ…何がなんだか…」 …俺もです。 『それでは競技を始めます。走者は位置に着いてください』 「あ、じゃあ俺行きますね」 「はい…明日の今に移動すればいいんですよね?」 「…多分」 乾いたピストルの音とともに第一走者が駆けていく。 今自分が着ている仮装から別の仮装に着替えるのはなかなか時間がかかるようだ。 「…喜緑江美里はこれを見越して、ブルマとネコミミだけというシンプルな仮装にした」 「のわっ!長門!いるならいると言ってくれ!」 気がついたら無口印の魔法使いがそこにいた。 「…赤組には残念であるが、喜緑江美里が朝比奈みくるに負けることは絶対に有り得ない」 「いや、別に朝比奈さんが勝てなくても一年と二年が頑張れば…」 『さぁ、残る走者もあと一組になりました!ここで赤組の走者が勝てないと優勝は消えてしまいます!』 …なんというご都合主義… 三年生の各走者が一斉に並んでる。 確かにその中には朝比奈さんと喜緑さんの姿も確認できた。 「…お菓子の山はもらった」 …いや、まだだ。 朝比奈さん(大)の言葉の真意はわからないが…このままでは終わらないはず! 「…喜緑江美里がダントツの速さでボックスに入った。あとは時間の問題」 それに続いて他の走者もそれぞれのボックスに…朝比奈さんは走るのが遅すぎて一番最後… 朝比奈さんがボックスの扉を開けて中に入り扉を閉める。 …次の瞬間。 「…あれ?ここは…運動会ですかぁ?」 サンタさんの姿に身を扮した朝比奈さん登場。 ボックスの扉が閉まってから朝比奈さん登場まで約一秒。 「へ?何で私こんなところに…」 「朝比奈さん!早くゴールまで走って!!!あっちです!!!」 「は、はい!」 …手品かよ。 「…あれは…朝比奈みくるの異時間同位体」 「…へ?そうなのか?」 「…あなたは現代に置ける力学的力の範囲を越えないようにと私に言ったはず」 …えーと…つまり…ボックスの中に朝比奈さん(現代)が入った瞬間に朝比奈さん(未来)と入れ替わって、朝比奈さん(未来)がそのままゴールに向かってて、明らかにそれは不思議パワー炸裂させてんじゃねぇかと。 …そういうわけですか? 「…そう」 「…すまん。あぁなるとは予想出来なかった」 ゴールを見ると、朝比奈さんがクラス一同に迎えられ、あたたかい歓声を浴びていた。 何が起こったのかわからないって顔してるな… 「…決着はリレーでつける」 そう言って長門は白組の方へ戻っていった。 …まぁ…いいのかな? とりあえず優勝のチャンスができたわけだし。 とりあえず戻ろう、ハルヒにまた謝らねばならん。 余談だが、喜緑さんはネコの耳と尻尾を犬のものに変えただけというスタイルで立ち尽くしていたそうな。 ――――――――――――― 「遂に白組に追いついたのね!」 「ここまで来たなら優勝を狙ってもいいかもね」 というか勝つ気でいこうぜ。 『それでは、最後の競技、クラス代表の「リレー」になります。各走者は準備をしてください』 「よし!じゃあうちのクラスの代表を盛大に送り出してやろうぜ!!女子の代表は誰だ!?」 「涼宮さんよ!」 「男子の代表は!?」 「確か谷口だったよ」 ………。 …あれ? 「…ねぇ」 …皆の考えを汲み取ったのかハルヒが口を開く。 「谷口って…今警察じゃないかしら?」 ………。 「え?どうするの?」 「わからないのね」 ………。 「…キョンくんが行けばいいんじゃない?」 突然、朝倉が口を開いた。 「俺?走るの遅いぞ?」 「そういう意味じゃないの、言ってたじゃない。負けても楽しめればいいって。全力でやればいいって」 「確かにそうなのね…大玉で失敗したぶんもう一度楽しんでくればいいのね!」 …いや、そんなんでいいのか? 「良くなかったらこんな提案しないわよ」 「…それもそうか」 …ハルヒ。 「何よ」 「もう一回だけチャンスをくれ」 「…次やったら罰金だからね」 …了解。 俺は中盤の走者、ハルヒはアンカーらしい。 「あいつそんなに足速いのか」 「単純に走りの速さだけなら三年生とも引けをとらないみたいよ」 …朝倉より速いのか? 「うん」 …凄いな。 トップランナーが走り出す。 赤組リード 「あなたもこの順番でしたか」 「げ、古泉…お前も走るのか?」 二番に渡る。 依然赤組リード。 「えぇ、足の速さだけは自信がありまして」 「…勝負にはならんと思うが全力でいかせてもらう」 三番、大きく引き離して赤組がリードしているが、白組の走者は長門に。 「長門…あいつも足速いのか…」 「ほら、次は僕達が走る番ですよ」 赤のバトンを手渡されて、思い切り土を蹴る。 古泉もすぐ走り出したようで真後ろにいるのがわかる。 …というかもう横にいる。 しかし諦めるわけにはいかない。 どうせ負けるのなら、少しでも差は広げさせない。 「っだぁ!!」 根性で古泉に食らいつき、次の走者にバトンを渡す。 「…キョンにしては頑張ったじゃない」 「…罰金か?」 「そんなわけないでしょ、このくらいの差なんてちょちょいと縮めてみせるわ!!!」 そう言ってアンカーのハルヒにバトンが手渡される。 「…凄ぇ」 二メートルほど許してしまったリードをどんどん縮めていく。 気がつけば白組のアンカーと並び…抜いていた。 大歓声の中、ハルヒはゴールした。 「…負けてしまいましたか」 残念そうに古泉は言う。 「…勝てた…んだよな?」 「えぇ、赤組の優勝ですよ。ほら、あなたも涼宮さんの下に行ってはどうです?」 …それもそうだな。 「まぁ、楽しかったよ。ハルヒの不思議パワーもたまにならいいかもな」 「観測者としては退屈しない限りです」 ニコッと笑う古泉に別れをつげ、未だ歓声の鳴り止まないハルヒの下へと俺は走った。 『赤組のみなさん、おめでとうございます』 アナウンスが流れる。 …全力で走った直後なのも忘れてもう一度走る。 『それでは、優勝チームの赤組には、お菓子の山が与えられます!!!』 あぁ、そんなのもあったなぁ…と思いながら走りつづける。 直後、 大きな爆発音が…運動場に響いた。 その時の様子を、谷口はこう語る。 いや、運動場の奴らは辺りをキョロキョロしてたけど、俺はすぐ目を付けた場所があったね。 ほら、中から見るより外から見た方が全体がわかりやすいじゃないですか。 直ぐに気がつきましたよ。お菓子の山が揺れてるって。 校舎半分ほどの山を揺らすほどですからね、よほどでかい爆発だったんじゃないでしょうか。 あとはもう雪崩みたいにお菓子が滑り落ちていきましたね。 どこにって?赤組の中心に決まってるじゃないですか。 アンカーの涼宮ハルヒを中心にみんなが集まってたところですよ。 狙い澄まされたとしかいえないなぁあれは。 そういや屋上に犬の耳を付けた黄緑の髪の人がいたけど…気のせいだったかな… へ?僕が脱走した理由? やだなぁ、脱走なんかしてないですよ。 たまたまトイレの窓が開いてただけで…あぁ、はい。逃げました。 ごめんなさい。 服?窓から出る拍子にビリビリっと…すいませんまた嘘つきました。 自主的に脱いだんです。全裸です。 っていうか見てたなら助けようとしろ谷口ぃぃぃぃぃぃ!!!! そんなこと叫んでる間にも、お菓子の雪崩が迫って、迫って… 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 ――――――――――――― 「…という夢を見たんだ」 「…はぁ」 ん?古泉、俺なんか変なこと言ったか? 「はい、キョンくん、古泉くん。お茶煎れました」 「ありがとうございます…その夢はどこで覚めたんですか?」 ほら、あれだ。お菓子が降ってきたところ。 あと一センチってとこで目が覚めたんだ。 そしたら妹がボディプレスかましてたよ。 「…疲れてんのかな、俺」 「…むしろ楽しみにしすぎてそんな夢をみたんじゃないかと」 …まさか。 そういうのはハルヒの専売特許だろ。 「キョンくんそんなに今日のハロウィンが楽しみだったんですかぁ」 いや違いますよ朝比奈さん。 仮に100歩譲ってそうだったとしても、俺がハルヒから弁当もらうシチュエーションなんて想像するわけないじゃないですか。 「………」 待て長門、何で今ため息を吐いた。 「…あなたは少し素直になるべき」 「僕もそう思います」 「長門さんの言うとおりですぅ」 …素直ったってなぁ。 「お待たせ!今日はハロウィンだからみんなに仮装してもらうわよ!」 部室の扉を蹴破ってハルヒが登場した。 「さっさとクジ引いてそれに着替えるのよ!」 まぁそういう行事楽しみというか…みんなでワイワイやるのが楽しみなんだがな… そう思いながらクジを引く。 「私お化けですかぁ…」 「…バニー…」 「おや、フランケンシュタインです」 いや…ハルヒ… 「ん?何かしら」 「これは勘弁してくれないか?」 そう言ってハルヒに見せた紙には 『裸の王様』 そう書かれていた。 おわり